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次回のWebLab Meeting

第50回 WebLab Meeting

日時

2024年07月13日(土) 15:00-17:30

報告者

◯小林哲郎(早稲田大学)・三浦麻子(大阪大学)

タイトル

誤情報や陰謀論に関する信念の測定における黙従バイアスとDKバイアス

会場

東京経済大学国分寺キャンパス* 6号館4階F401 *国分寺駅南口から徒歩12分(地図

概要

2021年1月に発生したアメリカ議会議事堂襲撃事件に見られるように、誤情報に基づく陰謀論は現実の政治にインパクトを持ちつつある。日本でも陰謀論者がワクチン接種会場に違法に侵入したり、「パンデミック条約」に関する誤情報を信じる人々が大規模な集会を開催するなどのケースが発生している。こうした中で、日本でも誤情報や陰謀論に関する関心が高まっており、さまざまな誤情報や陰謀論を「正しい」と信じている人々の割合の推定が行われている。しかし、誤情報や陰謀論を信じている人の割合の推定にはさまざまなバイアスが混入する可能性があるため、これらのバイアスを推定することが重要となる。典型的なバイアスは社会的望ましさバイアスであり、対処法としてリスト実験などを用いた研究が行われている。本発表では黙従バイアスとインセンティブ不足によるDKバイアスの2つに着目し、その大きさを推定する。

まず、黙従バイアス (Acquiescence bias) は、調査回答者がどのような質問であっても、「正しい」「賛成だ」「はい」などの回答を、「間違っている」「反対だ」「いいえ」などよりも選ぶ傾向を表す。陰謀論の文脈でも黙従バイアスによって陰謀論を信じる人の割合が過大推定されることが示されている (Hill & Robers, 2023)。本発表では、まず日本のデータを用いて誤情報や陰謀論関連項目への回答における黙従バイアスの大きさを推定する。 一方、インセンティブ不足によるDKバイアスは、誤情報や陰謀論についてよく考えるインセンティブが欠けているがゆえに、「わからない」を選択してしまいがちな傾向によって生じる。日本人はアメリカ人や韓国人と比べて誤情報を信じやすいとの調査結果が報道されているが (読売新聞, 2024)、これはDKバイアスを考慮すると結果が変わる可能性がある。本発表では、誤情報や陰謀論の真偽を判断する際に、金銭的なインセンティブを与えることでDKが減少し、真偽を正しく判定する回答が増えるかどうかを検討する。