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関田夕香
  • 「エレベーターミュージック」を読んで


  • 今やお店などの建物の中は、まるで音のない世界には耐えられないかのようにBGMで溢れている。その歴史は浅く、1920年代にアメリカでは「ワイアド・ラジオ(のちのミューザック)」という有線放送会社が設立されたことによる。BGMは、サティの「家具の音楽」のような、聴こうとする姿勢を求めない音楽である。つまり、聞えてくる音楽であると言うことである。それらが身体に影響を与え、労働者の作業効率や商品の売上の向上、エレベーターや病院など不安解消の役割を果たす。
  • 私の身の回りのBGMに耳を澄ませてみた。たいていは有線放送で最新のヒット曲そのままを流していることが多い。また、スーパーなどではボーカル抜きの吹奏楽風アレンジで流れているところもある。それらは、あくまでもお店の雰囲気作りに使われていると思う。だが、スーパーでは音楽を従業員に対しての合図として使っている場合もあるようだ。あるスーパーでバイトをしていた友達によると、ビートルズの「ヘルプ」が流れた時は、「食品売り場のレジがものすごく混みはじめたので応援お願いします」という合図だそうだ。おそらく従業員の呼び出しの放送など、お客にとって耳障りな音を極力避けたいという考えからくるものだろう。
  • そして、BGMと言い難いかもしれないが、ブザー音などもメロディー音に変わってきた。例えば、電車の到着音、発車音などがそうである。JR蒲田駅では、電車の発車音が「蒲田行進曲」、私の最寄り駅では、電車の到着を知らせる音はがカッコウの鳴き声である。その他、路線によって、色々なメロディーが到着音、発車音に使われている。無機質なブザー音よりはきつい感じに聞こえてこないのでよいと思う。
  • このようにBGMを含め普段何気なく聞えてくる音楽そのものからは直接的な訴えかけはない。だが、精神面に何かしらの働きかけがあるように綿密に作曲または編曲され、意図的に流されている。聞く側の私たちはそれらをどのように受け止めているのか。また、私たちが自ら好んで聞く音楽との違いはどうなのか。興味のあるところである。