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関田夕香
TAKE6「LIVE」 2000.4.19発売


  • 去年の10月4〜6日にBlue Note Tokyoで行われた6ステージをレコーディングしたものである。TAKE6にとって、これが初のライブアルバムとなる。TAKE6とはアメリカの6人組のヴォーカルグループで、1988年のデビュー以来、グラミー賞に6度も輝くという実力の持ち主。去年の来日の際に、テレビ東京の「たけしの誰でもピカソ」に出演したので、ご覧になった方もいるだろう。
  • ちなみに私は、まだTAKE6のライブはまだ行ったことがない。なにしろチケットの値段が1枚、1万円もするので、観に行くのに躊躇してしまっていた。彼らのライブはどんな感じで行われるのか1枚のCDから感じ取れるのは非常にありがたい。
  • 観客の拍手でステージ上に迎えられたメンバーが「One,two,three」のカウントで歌い出し、精密なハーモニーで観客の心を瞬時につかむ。普段のアルバムでも彼らの精密なハーモニーには圧倒されるのだが、スタジオでレコーディングされた場合、声に厚みを加えるために、何声も重ねたりして、加工が施されていることが多い。しかし、ライブではそれとは違い、ステージ上には6人だけである。一人ひとりが互いに遠慮なく、のびのびと歌っている。つまり、変に加工されてないので、彼らの凄さが良く分かるということである。今回が初のライブアルバムだということも納得できる。きっと、満を持した収録となったのであろう。
  • 私が特に耳を引き付けられたのが、5曲目「ALL BLUES」。これは、マイルス・デイビスのカバーで、ピアノの音以外、ベース、トランペット、トロンボーン、サックス、パーカッションなど楽器は、すべて彼らの声で演奏されている。ここまで楽器の音を忠実に再現できるとは驚きである。そして、Blue Note Tokyo というJAZZのアーティストがたくさん出演する会場にピッタリな雰囲気を醸し出している曲でもある。それと、9曲目の「SO MUCH 2 SAY」。ベースボーカルが早いビートを刻んで、耳に次々と音が飛び込んでくるが、ハーモニーをばっちり聴かせてくれている。そして途中、アドリブを入れたりして、楽しんで歌っているのが伝わってきた。
  • それから、訳詞を見てみてみると、ほぼすべてキリスト教に関係した歌であることがわかる。これを日本語で歌われたら、クリスチャンでない私にとって、ちょっと抵抗があるなと思った。英語詞だから、ストレートに意味が伝わってこないので、"ミュージック"として、純粋にハーモニーを楽しめる。そして、その歌声から、私の中にあるキリスト教に対する先入観が邪魔をせずに、彼らの純粋な信仰心が伝わってくる。彼らの信じる神様なら信じてみようかな、という気分になった。最後の曲で彼らの呼びかけに応じて、観客も女声2パート、男声1パートに分かれてコーラス参加して、コール・アンド・レスポンスが繰り返されている。ステージと客席が一体化し、まるで教会でゴスペルを歌ってるような勢いを感じた。きっと観客も私と同じように思ったにちがいない。
  • 最後に、ヴォーカルグループのライブ盤の唯一残念なところを言えば、顔と声の一致が出来ないことである。音だけなのだから、当たり前で仕方の無いことなのだが、一度も彼らのライブに行ったことの無い人間にとって、誰がどんな風に歌い上げているのか、歌い継いでいるのか立体的につかめないので凄さが半減してしまう部分がある。しかし、そこが憎いところでもある。ぜひ一度生で観てみたいという欲求を引き起こす。私もこのアルバムを聴いて、今度来日した際はぜひ観に行きたいと思った。