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松下かな恵
  • 今回私は“ヴォルガング・シュヴェリブシュ”著の「鉄道旅行の歴史」という本を読んだ。19世紀のヨーロッパで交通手段として鉄道が登場してきたいろいろな変化などがこの本では述べられている。
  • 鉄道が登場する前の交通手段といえば、馬車や船であった。旅などで移動するのにも多くの時間がかかった。しかし鉄道によりこの時間は短縮された。そして時間の短縮は空間の収縮にもつながった。つまり、馬車でかかっていた時間が鉄道により3分の1に縮まったということはそこにある空間も比例して縮まったのだ。もちろん実際に距離が縮まったというわけではないが、鉄道により地方と都市の間は確実に 近づいた。そして商品のあり方も変化した。著者も「生産地と消費地とが、近代輸送活動により空間的に分断されて、商品は初めて故郷喪失者となる。」といっている。以前は商品が生産され消費される場所というのがあり、特色を維持していた。しかし、輸送が発達し他の地域にも届くようになり、生産物は地方の特色、地方との一体性というのを失ったのだ。
  • そして百貨店というものができてきたのもこの頃である。1852年パリにボン・マルシェという百貨店が創設された。このような百貨店は発達した市内の交通体制を前提としている。この百貨店と鉄道には密接な関わりがある。鉄道におきた 変化と百貨店におきた変化はどこか似ている所がある。鉄道は旅行中の会話を終わらせた。そして百貨店も商品に値札をつけたり、自由に買えるようになり客との会話を終わらせた。
  • また、百貨店には商品の流通というのが欠かせない。商品の流れるような売れ行きがあり、流通と結びついていることが大切なのである。鉄道により、商品の流通がすすみ、百貨店は大量の商品と客を得ることができた。そして、鉄道が速度を加速させた為に旅行者と風景との間に見えない壁を作ったように、百貨店も交通により大量の客と大量の商品を持つことで、商品の売上げを早めた。そして、加速した商品の売上げにより買手と商品の関係というものを変えた。
  • このように、鉄道によりいろいろなことが変化し、それは商品と客との関係まで変えていったということがこの本を読んでわかった。

    ヴォルフガング・シヴェルブシュ”『鉄道旅行の歴史』法政大学出版局