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『グリーンマイル』  ~パンフレットとは~

星野まこと


  • 1935年、コールドマウンテン刑務所の死刑囚棟Eブロック。褪せた緑色の通路(グリーンマイル)は、受刑者が最期に歩む電気椅子へのみち。このEブロックの看守主任ポールと、受刑者として送られてきた奇跡を生み出す大男の天使、ジョン・コーフィの物語。
  • S.キングの『グリーンマイル』は、本を読み映画を観て、またパンフレットを読みいろいろな角度から作品を捉えることができた。最初は本と映画の比較を書こうかと考えたが、パンフレットを読めばプロの評論家が評論を書いている。それは私の意見とは違っていたが、読んでいるうちになんとなく納得させられてきた。ここで、ふとパンフレットのあり方について考えてみた。
  • パンフレットは、劇場に足を運ぶ人たちが映画を観る前、もしくは観た後に手にする冊子だ。今さら説明する必要もないが、その内容はあらすじ、評論家や小説家、時には大学の教授の書いた評論、スタッフとキャストの紹介。それから、ストーリーの中のいくつかの場面の写真や、撮影中のメイキング時の写真などがある。このパンフレットを観る前に読むか、観た後に読むかについて考えてみた。
  • 観る前に読む長所としては、予めあらすじを読んでおけば場面転換した時にわかりやすいということ。人物紹介もある。また前もって、先に観た評論家がみどころを教えてくれる。この長所を念頭にパンフレットを観る前に購入する人もいれば、劇場にせっかく来たのだからとパンフレットとポップコーンをとりあえず買い、始まるまでの時間をつぶすためになんとなくめくり、雰囲気を楽しむ、という人も結構いるだろう。しかし、短所としては、評論家の見方と同じになる傾向にあり、自分なりに観ることが難しくなると思う。先に話の展開を多少でも知ってしまうのはつまらないと思う人もいるだろう。
  • では逆に、観た後に読むことの長所としては、映画終了後にもう一度意識的に振り返り、余韻を楽しむことができるという点。自分なりに観て感じたものと、評論家の意見を比べることができる。話の展開を知らない方が、ストーリーに集中し引き込まれる。また、観終わって作品に満足感を持ち、パンフレットとして所有したいと思い購入する人や、逆に作品に悪いイメージを持ってしまい、なぜ、どこがよいのかをあとからパンフレットで確かめたいという人もいるだろう。ただ、あらすじを読んでいないことで、よく理解できなかったシーンも出てくるだろう。読んで後から気づくしかない、ということは短所かもしれない。このようなことが考えられた。
  • ところで、スタッフやキャストの紹介は、映画の作品自体とは切り離されたものである。だからたいがいは後半のページの部分に来る。紹介があることによって、作品を支えている人々についての詳しい情報が得られるとともに、その人々の経歴を並べることで作品に箔がつくと考えられる。また、撮影中のメイキング時の写真に至っては、完全に作り物であることを意識させ、観客も制作者の位置からいやでもニセモノであることを知らされる。
  • 前述したが、私は半年くらい前に本を読んでいたので、映画を本と比較することができた。ストーリーは多少忘れかけていたが、映像として目に飛び込んできた時のイメージはまったくそのままで驚いた。だが、映像になってしまうと、処刑シーンのインパクトが強すぎて観るに堪えず、積み重ねてきた優しいエピソードが一気に吹き飛ばされてしまった。また、本ではポールの老いた現在と1935年のシーンが交互に出てくるが、映画では最初と最後だけに「現在」をとどめ、とてもわかりやすくなっている。わかり易すぎて多少ショックだった。しかし、一人の評論家がパンフレットの中でこの物語は"ファンタジー"であると書いていた。この"ファンタジー"という言葉がこの映画に使われるということに私は発見があり、しっくりときて、"わかり易すぎた"という言葉は撤回したいと思った。
  • 今回、この『グリーンマイル』のパンフレットは、私にこのような効果を発揮した。 私は、パンフレットは専ら映画を"観終わった後に買う派"だ。