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角 知洋


Miles Davis / in Europe (1963) recorded live at antibes jazz festival COLUMBIA
  • このアルバムはマイルスがフランスのジャズフェスティバルに参加したときのライブを収録したものである。メンバーはマイルスのライブを聴くのは初めてだが、マイルスの数あるアルバムの中でもかなり気に入っている一枚である。
  • マイルスのスタジオ盤は聴いたことがあるのだが、観客がいるというだけで非常に緊迫した雰囲気が伝わってくる。特に一曲目の「枯葉(AUTUMN LEAVES)」は名演である。「枯葉」というのはジャズのスタンダードで数え切れないぐらいアーティストがプレイしている曲であるが、その中でも抜群の演奏だと思う(すべてを聴いたことがあるわけではないが)。マイルスとドラムのトニーウイリアムスの駆け引きが絶妙である。曲中で何度もマイルスのトランペットが唸りをあげ、トニーを挑発するのだが、トニーはぶっきらぼうにブラシでリズムをを刻み続けているのである。そうしているうちにテナーサックスのジョージコールマンのソロになりそこではトニーは人が変わったように攻撃的なドラミングを見せてくれる。トニーのあえて自分を出さないというかわきまえているところがこの曲の名演たる所以だと私は勝手に思ってしまう訳である。解説を手にとって読んでみるとトニーはこのバンドに参加してまだ二年も経ったいないらしい。このことをふまえてみて改めてトニー優れているのがわかる。
  • 次の曲の「MILESTONES」もすばらしい演奏である。スタジオ盤に比べるとかなりテンポが速い。BPMでいうと多分30ぐらい違うのではないかと思う。単にテンポが速くなっているだけでなく、メンバーそれぞれの音数もスタジオ盤に比べて減るわけでもない。個々のレベルは相当なものである(でも当たり前か)。それでいてスウィング感も失われていない。よくジャズで同じメンツで同じ曲を演奏しても全く異なる演奏になる、ということが言われているがまさにこの言葉通りである。
  • ジャズの曲中でよく [ドラムVS他の楽器] という構図がよく見受けられる。だからセッションしている最中に一番コミュニケーションしているのはドラマーなのである。インプロヴィゼイションしているプレイヤーの気持ちを察するというか、相手の気持ちを素早く理解することに長けているドラマーというのが良いジャズドラマーだと思う。もちろんその方法としてアイコンタクトがあるが、その相手がこの瞬間にこういう表情をしたからドラマーがドラムで返事をする、言葉ではなかなか表現することが難儀ではあるがこういう優れたコミュニケーションのできるプレイヤーというのは本当にすばらしいプレイヤーである。そこには技術云々ではどうにもならないモノがある。
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