Back Next



星野まこと
マンウォッチング〜人間の行動学〜 デズモンド・モリス 著

  • さまざまな動作の意味を知るマンウォッチングとは、相手の本当の気持ちをのぞいてやろう、相手より優位に立てるだろう、というためのものではない。人の行動に関する予測性を高め、他人への寛容さを増すためのものである。他人の動作の意味を理解するということは、その人が抱えている問題を洞察することであり、行為の裏側を知ることによって、攻撃することなく許容できるようになる。
  • 人はさまざまな動作をし、時にはそれが言葉よりも強い主張をすることもある。この身体動作は、意識的、または無意識的に何らかのメッセージを送る。送り先は他者であったり、結果的に自分自身に向けているものだったり、また相互に送りあうこともある。
  • 人間という、複雑な思考やさまざまな行動のできる動物には、他の動物よりも、意味を持つ多くの種類の動作や信号、ディスプレイを持つ。中には文化の影響を受け、国や地域によって異なる方言信号や変形もあるので、異文化間のコミュニケーションの時には言語だけでなく、動作にも文化差があることを理解せねばならないと思った。しかし、言語でのコミュニケーションがきちんとできなくても、人は分かり合おうとしてその表情や身振り手振りで何となくでも分かり合うことができる。これは人の基本的な動作原理が同じだからである。
  • 人は、他人に気づかれようと気づかれまいと、絶えずその体はメッセージを送っているように思う。自分の中にある気持ちや消化しきれないものをつい表情に出したり、せわしなく歩いてみたり、髪やひげをいじったりする。片足に体重をかけたり、肘をついたりしてくつろぎの姿勢をとっていることすら、その人の気分はメッセージとして見ることができる。だから、お金をもらわないとまったく動かない路上のパントマイムをするピエロはメッセージを送っていないことが逆に奇妙で面白いのかもしれない。人は絶えずメッセージを送り発散することで、バランスをとりながら生きているのだと思う。
  •