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![]() ・『MINAMATA ミナマタ』は、熊本県水俣市に発生した「水俣病」をテーマにしている。高度成長期に起きた公害で日本の四大公害病と言われている。「チッソ水俣工場」による排水が不知火海を汚し、そこで取った魚を食べた人や産まれた子どもが発症した病気で、身体の痙攣や変形が症状として起きるものである。「チッソ」はその関連性を否定し続けてきたが、公害を告発し追及する運動が根強く続き、裁判で認定されたのは、ユージン・スミスが水俣に住み着いて写真を撮り続けて来た時期に重なっている。 ![]() ・『MINAMATA ミナマタ』は水俣ではなく、日本の他の地でもなく、セルビアとモンテネグロで撮影されている。水俣市やチッソが反対したのかと思ったが、1970年代とは様変わりした水俣市には撮影に適した場所がなかったというのが理由のようだ。また映画には当然、多くの日本人が登場するが、一部の俳優以外はヨーロッパに在住したり滞在していた人たちを募って集めたということだった。そのモンテネグロのティヴァトの町に再現された舟小屋や居酒屋、そしてユージンの使った暗室は、そう言われなければわからないほど自然なものだった。 ・で、肝心な映画だが、かつては報道写真家として活躍していたスミスがニューヨークで酒に溺れた孤独な生活をしているところから始まっている。そこにアイリーンが来て、水俣病の話をして、二人で水俣に行くことになる。人生にもカメラにも絶望していたスミスが、水俣の人たちと親しくなり、病気の残酷さやチッソや日本政府の冷淡さに直面して、実情を写真で世界に伝えることを決心するのである。 ・『MINAMATA ミナマタ』はまるでドキュメントのように作られている。病に苦しむ人たちが入院している病院に潜入して、その変形した身体や痙攣している様子を写真に収め、チッソ工場前での抗議の座り込みでは、スミス自ら暴行を受けて負傷してしまう。写真の公表を抑えるために金を持ちだすチッソの社長とスミスとのやり取りもあって、ジョニ・デップはすっかりユージン・スミスになりきっていて、デップのすごさを改めて見た気がした。 ・映画はもちろん、日本でも公開されたが、それほど話題にもならなかったようだ。正確な数字は分からないが、ジョニ・デップの他の映画に比べたら、観客動員も桁違いに少なかっただろう。ただ、ネットでは見られるから、ぜひ見て欲しいと思う。何より大事なのは、水俣病は過去の話ではなく、現在でも国やチッソを相手に闘われている問題なのである。 |
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