東京経済大学

2019年度 第60回
経営学部 原口 恭彦 教授

「○△×の意味が伝わらない」海外ゼミで文化の違いを実感!経営学部 原口 恭彦 教授 「○△×の意味が伝わらない」海外ゼミで文化の違いを実感!経営学部 原口 恭彦 教授

HARAGUCHI Yasuhiko
東京経済大学 経営学部教授
学習院大学経済学部経営学科卒業。神戸大学大学院経営学研究科 博士前期課程修了。神戸大学大学院経営学研究科 博士後期課程修了。株式会社関電工での勤務、日本学術振興会特別研究員、広島大学大学院社会科学研究科教授等を経て、現職。主な研究分野は、経営管理、経営組織、人的資源管理、キャリア形成とキャリア教育。主な担当科目は、経営管理論、会社入門など。これまでに日本労務学会理事、日本キャリア教育学会理事などをつとめる。著書に『Automobile Industry Supply Chain in Thailand』『中国における日系企業の経営』『人的資源管理【第3版】』(共著、分担執筆、監訳・翻訳)ほか。

働き方改革に就活、任天堂にマンダムと、研究テーマが多彩です。

 「若年層の仕事に対するモチベーションに影響する要因はなにか?」「大学生の就職活動と雇用システム国際比較」「働き方改革がうまくいく組織とそうでない組織の違いは?」「学生と社会人が求める職場環境の差異は?」など、ゼミ生たちは経営管理論を軸にした多様な研究テーマに取り組んでいます。
 経営管理論とは、適切な管理という立場から、企業組織内だけでなく組織外も含めて見渡す学問のこと。戦略、組織、人材、生産、調達、技術、財務などの管理を総合的に扱うものであり、ある意味経営学の中心に位置する学問といえるでしょう。
 ほかにも、「なぜ任天堂は家庭用ゲーム事業で業界上位を維持できるのか?」「マンダムがインドネシア市場で売り上げを伸ばしている要因は?」といった、経営戦略論よりの研究に挑むグループもあります。

学生の研究に、口出しは極力しないそうですね。

 原口ゼミは、自分たちで決めて、調べて、まとめていこう、というのが基本スタンスです。ですから、学生たちがディスカッションをしている間、私はぐるぐる歩き回って聞き耳をたてているだけ(笑)。先回りしたアドバイスや誘導はしません。その代わり、彼らが助言や支援を求めてきた時はじっくり相談にのりますし、必要な知識やデータの提供、人の紹介などは、私の経験や人脈をフル活用してバックアップします。
 学生に求めるのは、研究に対して正直・誠実であること。そのため、調べていくうちに問題意識が移り変わっていったり、インタビュー取材をしたいと急な要望が上がってきたり、「統計学が必要だから今から勉強しようね」という大変な事態になったりすることも(笑)。それでも、真剣に向き合うからこそ直面する研究過程の紆余曲折をもっとも大切にしています。
 1年間の研究成果は、学内でのゼミ研究報告会で発表するだけでなく、研究協力者への報告、他大学の大学院生や社会人との交流などにも生かされます。慣れ親しんだ仲間内とは違う、アウェーでのプレゼンや討論も、学生にとっては得難い経験になると思っています。

タイでの海外研修は、実り多いものだったそうですね。

 今年の8月に約1週間、タイのバンコクを研修で訪れました。現地の企業や病院、リハビリ・介護施設などの訪問が目的です。シートベルトの素材を作っている日系企業では、日本とは異なる労働環境下で現地の従業員をマネジメントする難しさややりがいを聞くことができました。また、介護食を作っている企業で聞いたのは、文化の違いによる意外な苦労話。例えば、現地の栄養士さん向けに「減塩:△ 心臓疾患:×」といった、利用者の状態に適した商品を示す対応表を作ったところ、「○△×の意味が分からない」と突き返されてしまったそうです。日本人にとっての当たり前が決して当たり前ではないこと、異文化の中でビジネスをすることの現実を、学生たちはひしひしと感じたことと思います。
 ほかにも、現地学生との交流や市内の探索など、予定をぎっしり詰め込んでいたため、毎朝5時起きという超ハードスケジュールでしたが、学生たちは皆驚くほどイキイキしていました。食事や買い物にもすぐ慣れて、一緒に行こうか?と聞いたら「あ、大丈夫です」と断られたことも(笑)。初めて海外に行った学生も多かったのですが、それぞれが自信をつけて、ひと回り成長した姿を見せてくれたことを嬉しく思います。

先生は、介護分野の研究をなさっていますね。

 ご存じの通り、介護をはじめとする社会保障分野の労働者不足は極めて深刻です。私は、「どうすれば離職率を下げられるか」「皆が生き生きと働ける人材マネジメントとは」「外国人労働者のモチベーションを高める組織のあり方とは」「介護ロボットの導入が職員や利用者にどう影響するか」「ICT機器での見守り支援の効果」など、様々な観点で長年研究を続けています。大学卒業後、私は一般企業で人事・労務管理業務に従事していましたが、その時の経験が、現場で起こる多種多様な問題を肌感覚で理解したり、経営者にインタビューしたりする際にも生きているように思います。
 介護分野における課題は山積みですが、それはつまり、自分の研究が世の中の役に立つということ。そのことが研究を続ける何よりの原動力になっています。

大学生活のアドバイスをお願いします。

 大学というのは、集団に紛れてなんとなく過ごしていても、単位を取れば卒業できてしまう所です。でもそれだけではあまりにもったいない。特に東経大は、中規模大学ならではのアットホームな雰囲気があり、教員と学生の距離が本当に近いですよね。この環境を最大限に生かして、教職員ともっと積極的にコミュニケーションをとることをお勧めします。授業や研究の内容についてはもちろん、社会人としての様々な経験や考え方に触れることもとても有意義だと思います。
 東経大で4年間を過ごした皆さんが社会に出る時、自分の手・足・頭を使って自信を持って前に進める人、そして、失敗や挫折にも負けないレジリエンスを備えた人へと成長してくれることを期待しています。

Students'VOICE原口ゼミで学ぶ学生の声

鈴木正智さん(経営学部4年)
昨年度は「マンダムのインドネシア進出」について調べました。他の大手化粧品会社が中国や韓国に進出している中、マンダムはなぜインドネシア? という疑問が出発点です。テーマが定まるまで苦労しましたが、購買力に合わせた商品展開と、流通網の確立が成功要因であるという結論にまとめ上げることができました。ゼミで培った思考力や人前で話す力は、就活でも大いに役立ちました。原口先生は、見た目通り、人柄も口調も柔らかな方。知識も人脈も話題も豊富で、自分もこういう大人になりたいと思わされます!
前田侑希さん(経営学部3年)
「若年層の仕事に対するモチベーション」について研究した際は、途中で統計手法の重回帰分析を取り入れることになり、本当に大変でした。今年度はその経験も生かし、「働き方改革」、特に育休の取得率に注目して研究を進めているところです。ゼミに入るか迷っている人には、絶対に入るべき!と伝えたいですね。授業とは違う頭の使い方やプレゼンスキルが身につきます。それから個人的には、時間のあるいま、本や映画をたくさん見た方がいいと思う。僕も東経大の図書館で、昔の名作映画などをよく見ています。未知の世界を知ることで、考え方の幅が広がるように思います。

※掲載されている教員・学生の所属学部・職位・学年及び研究テーマ等は、取材当時のものです。

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