東京経済大学

2019年度 第59回
経済学部 小林 健一 教授

アパレル業界の余剰在庫も海を渡れば、人気商品に!経済学部 小林 健一 教授 アパレル業界の余剰在庫も海を渡れば、人気商品に!経済学部 小林 健一 教授

KOBAYASHI Kenichi
東京経済大学 経済学部教授
東北大学経済学部経済学科卒業。東北大学大学院経済学研究科 修士課程修了。東北大学大学院経済学研究科 博士課程単位取得満期退学。主な担当科目は、アメリカ経済論、国際経済学入門。著書に『アメリカ経済経営史事典』(共監訳)、『私たちの国際経済』(共著)、『アメリカの電力自由化―クリーン・エネルギーの将来』ほか。

「ビジネスモデル」ってどういうものですか?

 皆さんの家には、インクジェットプリンターがありますか? これ、プリンター本体は割と低価格ですが、インクカートリッジには結構な金額がかかりますよね。あるいは、TVCMでもおなじみのネスレのエスプレッソマシン。マシン本体は無料ですが、コーヒーやエスプレッソを楽しむには専用カプセルを買い続けることになりますね。これらは、「ジレットモデル」と呼ばれるビジネスモデルの典型例。ジレットは20世紀初頭、ひげ剃りの柄を安く提供し、替え刃を売って儲けることを思いつきました。「本体の価格を抑え、継続的に購入する消耗品で収益を上げる」という有名なビジネスモデルです。
 他にも、例えば検索サイトのグーグルは、「ユーザーが検索したキーワードに関連する広告を表示する」という、それまでのネット広告とは全く異なる新たなビジネスモデルを開発しました。
 このように、企業がどのように利益を生み出しているかという、いわば"儲ける仕組み"のことをビジネスモデルといいます。言うまでもなく、ビジネスモデルを構築することは非常に難しく、また、一時は成功しても市場環境の変化によって通用しなくなることもあります。このゼミでは、成功例・失敗例問わず、国内外の多様な企業のビジネスモデルを取り上げ、調査・研究しています。

企業や業界を見る目が鍛えられそうですね。

 就職活動をする際はもちろん、社会人として様々な取引や投資をする際にも、「企業を見る目」を鍛えておくことは非常に重要です。ゼミでの学びはその訓練の一つ。テキストの輪読で基礎知識を押さえた後は、3人1組のグループに分かれて関心のある企業・業界の研究に取り組みます。
 例えば、コンビニエンスストアでアルバイトをしていた学生が注目したのは、まだ食べられるのに捨てられてしまう「食品ロス」の問題でした。彼らのグループは食品ロスの現状に加え、消費期限が迫った商品の値引きをはじめとするコンビニ業界の対応、海外の取り組みなどを調べてまとめ上げました。他にも、IKEAの店舗がなぜ消費者を惹きつけるのかを分析したり、「フェアトレード」の仕組みや広がりについて調べたりしたグループもあります。
 最近の学生は、企業の「収益」のみならず、「社会との関わり方」にも注目する傾向があるように感じます。企業活動の陰で環境破壊や児童労働などが行われてはいないか、先進国の企業としてやるべきことはないか、等々。「世の中を良くしていきたい」という純粋な思いに、私が学生から教えられることも多いのです。

経営者らを招き、企業が抱える課題に挑むこともあるとか。

 ゼミ生に大変人気があるのが、企業の経営者らをゲスト講師として招いて行うプログラムです。これは、実際の市場環境などの与件を元に、企業がいま直面している課題解決の提案をするというもの。
 例えば、清涼飲料水の会社から与えられた課題は「若年層の売り上げをいま以上に伸ばすには?」。コンペに参加した5チームは、新商品、広告展開、販売戦略など様々な視点で提案を行いました。また、アートギャラリー運営やまちづくりなど、幅広く事業展開している「寺田倉庫」の幹部を招いたこともあります。お題は「東京オリンピック・パラリンピックの際の訪日外国人向けの日本文化発信の方法」。このときは「英語による落語会」を提案したチームが高評価を得ました。
 ゲスト講師は、実は皆かつての私の教え子たち。大学の授業だけでは知り得ない実社会の課題に触れられる機会は本当にありがたいですし、それぞれに活躍している姿を見られるのも嬉しいですね。

先生は、アメリカ経済論がご専門ですね。

 いまは、アメリカを中心としたエネルギー問題の研究をしています。アメリカは、地域によって産業構造やエネルギー構造が大きく異なっており、環境規制の厳しさや人々の環境意識もまちまちです。例えば、ニューヨーク州は「20年かけてクリーン・エネルギーを100%にする」と宣言するほど先進的。一方で、かつて製造業で栄えた中西部は、火力と原子力が80%を占めるという古いエネルギー構造のエリア。ここはトランプ政権の主たる基盤の一つでもあります。
 今後も、アメリカを中心に、エネルギー政策とクリーン・エネルギーの発展に関する研究を続けていきます。原発事故に見舞われた日本の今後のエネルギー戦略を考えるうえでも役立つはずです。

大学で授業を受ける際のアドバイスはありますか。

 何となく授業に出て、何となく単位を取るような過ごし方をしていてはもったいないよ、ということを伝えたいですね。これは個人的な意見ですが、そもそも1年間に学ぶべき科目数が多すぎるように思うのです。私だって、学部生時代によく理解できたな、といえる科目はたしか5科目くらいでした(笑)。助言できることがあるとすれば、「今年度はコレをものにする」「自分はコレで人に差をつけたい」などと決めて取り組むことでしょうか。語学力を伸ばす、会計学を極める、国際関係を深く学ぶ、など何でもいいのです。大学時代は、社会に出る前の最後の準備期間です。これからの人生を歩むヒントやスキルを掴みとって、ここを巣立っていってほしいと思います。

Students'VOICE小林ゼミで学ぶ学生の声

横山 巧さん(経済学部3年)
いま取り組んでいるテーマは、「アパレル業界の余剰在庫を減らすには」。日本のみならず地球規模の視点で解決すべき問題だと思っています。ゼミで鍛えられたのは、聞き手にとって分かりやすく説明する力。人前で話す機会が多いので、度胸もつきました。小林先生は常ににこやかで優しい方。プレゼンの際も「この部分の説明を加えてみたら?」などと的確なアドバイスをくださいます。ゼミの卒業生も活躍されている方が多く、刺激を受けます!
西本一貴さん(経済学部3年)
小林ゼミを選んだのは、ゼミ紹介をしてくれた当時2年生のプレゼンがとても上手で、パワーポイントもわかりやすく、自分もこんな風に成長したいと思ったからです。昨年度取り組んだテーマは「フェアトレード」。自分には縁遠い話だと思っていたのですが、調べていくうちに、スターバックスやイオンといった身近な企業も熱心に取り組んでいることを知りました。間接的に自分も貢献していることに気づいて、さらに興味が湧きました。

※掲載されている教員・学生の所属学部・職位・学年及び研究テーマ等は、取材当時のものです。

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