太古代の花崗岩
太古代の初期の地質帯については、TTG(Tonalite Trondjhemite Granodiorite)と呼ばれる、カリウムに乏しい花崗岩が大きな分布を占める。その化学組成上の特徴、すなわちカリウムに乏しくナトリウムに富み、イットリウムや重希土に枯渇し、ストロンチウムに富むこと、などからソレアイト質の玄武岩質岩が高圧条件下でざくろ石(+ホルンブレンド)に富み、斜長石に乏しい融解残渣をもって部分融解することによりTTGを形成したマグマが生じたのだ。しかしながらその融解の起こったテクトニクス場については見解が分かれている。また太古代の地質帯に存在する花崗岩には、TTGだけではなくよりカリウムに富み重希土の枯渇が見られないものも存在する。
大陸地殻の中でも形成年代が35億年まで遡る岩石が見られる場所は、地球上でもそれほど多くない。特に古い時代(38-40億年前)の岩石は、断片的に出現するのみである。それらより少し若い35-30億年前頃の岩石が、まとまった地質帯として産出するのは西オーストラリアのピルパラクラトンや南アフリカのカープバールクラトン、南インドのインドクラトンである。太古代の岩石はしばしば後の時代の変成作用を受けていることが多く、オリジナルの火成活動の復元に際してしばしば障害になるが、ピルパラクラトンに産する岩質岩は後期の変成作用を比較的免れている。
今回ピルバラクラトンのNorth Pole岩体の1試料(PL45A)とCarlindiバソリスの2試料(C16A,C20)についての標本をしめす。PL45AとC20がいわゆるTTGとしての性質をもち,C16Aがカリウムに富み,重希土の枯渇が見られないタイプの岩石である.
ピルバラクラトンの試料の地質概略
ピルバラクラトンはオーストラリア北西部に存在し、グリーンストン帯、及びそれを覆う27.7-24億年前頃の被覆層(Mount Bruce Supergroup)からなる。全体として東西700km、南北500km程度の広がりを持つ。ピルパラクラトンのグリーンストン帯には大小20あまりのバソリスが存在する。しかしながら全般に露出が悪く、地球化学的な検討が行われているのはピルバラ東部のいくつかの岩体に限られる。
最近NelsonによるSHRIMPを用いたU-Pbジルコン年代がこれらのバソリスの岩石についても報告され、時代関係がある程度明らかにされた。Muccanバソリスについては3470-3244Maの年代が得られている。3400Maを超える年代は主に片麻状花崗岩、片麻岩から得られたものである。より若い年代として、黒雲母花崗閃緑岩について3313±3Ma、黒雲母モンゾニ花崗岩について3303±2Ma、黒雲母モンゾニ花崗岩について3252±3Ma、斑状黒雲母モンゾニ花崗岩ついて3244±3Maの年代が報告されている。Warrawagineバソリスの花崗岩質岩についてはNelsonによりトーナル岩質片麻岩中のゼノクリストと考えられるジルコンについて3576±6Ma、3595±12Ma、3655±6Maの年代が報告されており、これは従来知られているピルバラのグリーンストンからの年代より古く、グリーンストンの形成に先行する珪長質地殻の存在を示唆するデータとして注目されている(Nelson、1999)。