染色法
花崗岩の分類には石英、アルカリ長石、斜長石のモード組成(体積比)がひとつの基準となります。モード組成の測定は顕微鏡下のポイントカウンティングというきわめて辛気臭い?方法が一般的ですが、この三者の鉱物が鏡下で区別がつきにくい場合もあり、厄介です。そこで長石を異なる色に染色することでより容易に区別しようとする試みが古くから行われてきました。
花崗岩中の長石の染色レシピ
用意したもの
フッ酸 約50%:なるべく濃いもの
コバルチ亜硝酸ナトリウム粉末
ロジソン酸カリウム溶液:ロジソン酸カリウム溶液0.2g+蒸留水80ml:日もちしないのでそのつど作成が望ましい
塩化バリウム5%溶液:100ml:これは安定な溶液で一度作るとなくなるまで使える
アクリルの箱:サイズは染色したい試料が乗る大きさ
アクリルの棒:箱の上に差し渡して試料を載せる
大きめのアクリルの箱:エッチング用のアクリル箱を上から覆う
保護面:フッ酸が怖いので念のため
厚手のゴム手袋(エフテロン耐酸手袋)フッ酸から身を守るため
薄手の手袋:フッ酸以外の薬品を扱う際にはめるもの
ペンキ塗り用の小筆
スポイトつきの褐色瓶:ロジソン酸カリウム溶液の保存用
手順
広島大学の早川先生のレシピにもとづいて実験を行なった.
1・濃フッ酸(50%)を入れたアクリル容器を準備する.
2・フッ酸を入れた容器の上にアクリル棒を差し渡して,岩石試料の研磨面を下に伏せて3~5分間、フッ化水素の蒸気にさらして腐食(エッチング)させる
1~2は、よく換気されたフード内で行わねばならない
3・水に浸してから、塩化バリウム溶液に素早く浸す.1分間ほど放置.
4・流水で軽くすすぎ、コバルチ亜硝酸ナトリウムの粉末を小筆で直接試料面に塗り,1分程度放置する
5・余分なコバルチ亜硝酸ナトリウムが完全に取り除かれるまで、流水下で静かにすすぐ。ここで試料面の腐食が十分であれば、カリ長石は明るい黄色に染まる.。
6・蒸留水で静かにすすぎ、スポイトにとったロジソン酸カリウム溶液を試料面全体にかけて、2~3分間放置する。ここで斜長石が赤色(レンガ色)に染まる。
7・十分に染まったら、余分なロジソン酸カリウム溶液を取り除くために流水ですすぐ
実験時の試行錯誤
私たちの実験では、フッ酸を温め蒸気を多量に出すと危険なため、温めないで行うことになった。そのため、フッ酸でエッチングする時間を10分に延ばした。
その他は、レシピ通りに行ったが、うまくいかなかったので、やり方を変更することにした。原因を考えた結果、冬季に実験したため、室温が低い事が挙げられ全体的に薬品にさらす時間を延ばした。変更点は以下の通り
・塩化バリウム溶液にさらす時間1分→2分
・コバルチ亜硝酸ナトリウムにさらす時間1分→2分
・ロジソン酸カリウム溶液にさらす時間2~3分→5分
さらに、薬品を流す流水が強すぎるのではないか?ということとになり、蒸留水を入れた(洗瓶)を使いそっと流すことにした。
しかし、なかなかうまくいかなかったので、更なる改良を加えた。コバルチ亜硝酸ナトリウムにさらすとき粉末を塗るので、試料面を完全に乾燥させず、少し濡らした状態で上から塗ることにした。これは、表面に残った水分に粉が溶解し、飽和状態にさせるためである。これにより反応しやすくなると考えた結果である。また、ロジソン酸カリウム水溶液は試料面に液をたらし、風を送り表面を乾かした。理由は、乾かすことによりロジソン酸カリウムの濃度を濃くしようと考えたためである。
以上の改良点によるものかは判らないが、とりあえず現時点でもっともよく染色できたものは、これである。しかし、まだ満足できる出来ではないので、今後も手法の改良を続けてゆく予定である。