篠塚良雄さんのライフヒストリー
写 真
<篠塚良雄さんについて>
篠塚良雄(旧姓:田村良雄)さんは、元731部隊の少年兵であり、石井四郎の下で日本軍の細菌兵器の開発にかかわった方である。少年の功名心が、巧妙に利用され、日本軍の組織のなかに組み込まれていくさまを、ゼミの場で語っていただいた。731部隊の教育班での1日の生活をお聞きしたところ、現在の医大生の生活とさほど変わらないようなものだった。細菌兵器の開発は、極めて合理的なシステムのなかで進められたのである。また、特別班の人間以外は、マルタといわれる生体実験のための中国人とは会うことができなかったそうである。
篠塚さんのお話を聞きながら、戦争が少年の人生に与える影響の大きさを再認識するとともに、戦後52年が経過した今、戦争の事実を聞き承けていくことの難しさと大切さを感じさせられた。何度も語られていくなかで、その記憶は一つの様式に閉じこめられてしまっている。当時の日々の生活の事実を問いかけながら、繰り返し語られた様式を解体し、再構築していく営み、これこそがライフヒストリー研究において求められていることではないだろうか。今年の調査では、語り手の語りに耳を傾けるにとどまり、語り手の語りの様式を解体するところまで行き着けなかった。学び、われわれにとって抜き差しならない問いをもち、語り手に向き合っていくことによって、共同作業で新たな語りを生み出していくこと。これが来年度の調査の目標である。
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