<教育方法コメント(8)>
第八回:テーマ【教育実習生の体験に学ぶ】
先週は、教育実習生のHさんとOさんにゲストとして来てもらい、教育実習の体験の重さとさまざまな工夫について話をしてもらいました。二人とも大きな苦労をしたけれども、それ以上のものを受けとることができた実習だったのではないかと、わたしは思います。理論は自分との対話だけでも出来上がります。だけど、実践は、必ず他者とのコミュニケーションを要求されます。だから、しばしば思った通りにはいきません。うまくいかないことだらけです。それでも、自分自身が伝えたいことがらをきちんと準備し、その上で、生徒たちに向かうならば、うまくいかないことから多くのことを学べます。そして、そこで得た学びは、経験というかたちをとって、皆さんの身体に深く刻まれるのです。東さんも岡田さんも、昨年はそこに皆さんと同じように座っていたのです。それがこちらに立ち、堂々と自分の体験を語る。なぜそのようなことができるのか。それは、実習での学びと体験が、確かな事実として、彼らのなかに根づきつつあるからだと、わたしは考えます。今日は、皆さんに授業案を書いてもらいます。実践において、生徒から学ぶことができるように、今の自分自身を賭けた授業のデザインに挑戦してもらいたいと思います。
《教育実習生のお話についての感想》
(1) 元気が出た人々
「Oさんのやった授業はちゃんと生徒に伝わっていたと思います。授業を見て、前半はあまり意見はでていなかったけど、後半、生徒が活発に意見を出していたし、それに生徒からの手紙をきいて、よけいにそう思いました。
そして、二人の話を聞いて、教育実習の大変さをよく知りました。教育実習について希望のある話をされるより、苦労話や事実を話してくれた方が私には勉強になると思います。二人の話は私によってすっごくためになりました。三年後の教育実習を頑張りたいと思います。」(Iさん)
→うーん、たのもしい。
「教育実習は良い経験になると思いました。僕自身は『教師になりたい』という意志は今あいまいです。しかし、今日の話を聞いて、たいへんな葛藤や苦労やざせつを感じましたが、僕はその体験かなぜか非常にうらやましく感じました。」(Tさん)
「実習生の話を聞くということだったが、Oさんが体験したことを聞いて、とてもなんか安心した気分になった。実習が必ず自分の思った展開になるわけではないし、やっぱる失敗したようにもなってしまうんだなあと思った。」(Kさん)
(2) ちょっぴり不安も増した人々
「僕は元気に楽しく生きるのが自分の目標なので、実習をしてもそのスタイルはかえないと思います。昼休みとかは時間があればドッヂボールやサッカーがしたいです。Oさんのを聞いてかなり不安になった。でも僕はまだ先生じゃないから少し気楽にいこうと思いました。自分になりのスタイルでやるOさんはすごいと思いました。僕も2人のようにさまざまな経験をつみたいと思います。」(Oさん)
「二通りの教育実習の風景がみれてよかったです。今の中、高校生に教えていくことの難しさは、考えていた以上だなあと思った。ちょうど大人びているけれどもまだ子どもという扱いにくい年齢の子たちは、自分もその年齢の時代があったはずなのに、何を考えているのか、どう扱えばいいのかが分からない、少しとまどってしまうだろうなと思いました。きっと教える側がとまどっていたら生徒たちはもっと困ってしまうのだろうと思います。私の場合、何をどういうふうに伝えたいのか教えたいのかを自分の中でまとめることが必要だと思いました。」(Aさん)
(3) 自分の道について考えている人々
「今、授業案をたくさん(でもない)書いていますが、いつもこんなので生徒が楽しんでくれるわけない!と思って、とことん考えます。どんな内容を考えても納得できずにいます。私が生徒の立場だったら…と考えて案をつくるのは楽しいから好きです。今日はたくさん話をしてもらって、実習生にしかできないこともあるんだと思うようになりました。若さでチャレンジっていうのも悪くないと思います。もちろん、それまでの勉強はきちんとしますが。中学生とたくさんおしゃべりできたらいいと思います。手さぐりで何かみえたときにまた世界が広がると思いました。」(Sさん)
「まだ先(3年後)だが俺的に目標を掲げることができた。それはホームルームを担当するクラスの顔と名前をあらかじめ一致させておく。何気ないことかもしれないが、生徒にしてみれば、『初対面の奴が自分の名前を呼んでくれた』というような気持ちを少なからず持ってくれるかもしれない。それがコミュニケーションをとる第一歩になってくれれば、気分的にも少し楽になるのではないだろうか。おまけに授業をしていく上でも役立つはずである。…自分も3年後、2週間の教育実習を成功させるために今のうちに貯金をためていけるような学生生活を送っていきたいです。実習生の皆さん、忙しい中ありがとうございました。」(Tさん)
「ビデオでの2人の先輩の先生の姿、なかなか様になっていてカッコ良かったです。授業案の作成について、私も今年3年生なので、このことが一番大変なのだと思います。今日の授業で、H先輩が授業案の作成についての教材調べはいくらやっても無題ではないとおっしゃっていたこと、また1、2年生はいろんな体験をすること、という言葉が印象的でしたし、O先輩の授業も素晴らしいと思いました。私が来年の教育実習に対して不安なことは、授業をするのもそうですが、その前に、どう生徒たちの心をつかむかです。あと、今日の授業で、これから教材調べにはげみます。」(Tさん)
(まとめてコメント)
皆さんの熱いコメントを読み、話してくれた実習生も話した甲斐があったと思っていることでしょう。わたしの授業は、単位をとって終わりというものではなく、ここを離れてもさらにそれぞれが自分の課題を発展させていくということを、目標としています。また、皆さんのなかから、来年あるいは再来年、あるいは再々来年、ここで話をしてくれる人があらわれることを楽しみにしています。
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