<教育方法コメント(5)>


第五回:テーマ【授業のアイディアからテーマへ】



 
 さて、授業のアイディアからテーマへという先週の課題、いい感じになってきました。今年の特徴は、テーマがいくつかのカテゴリーに分類できるということです。いじめ・自殺などの生と死を問う問題、ゴミ・食料・水などの地球環境問題、世界の諸国と出会う異文化交流問題、経済や社会の仕組みの四つのカテゴリーに分けることができました。これは、わたしたちのこれからの課題がようやく現れつつあるということではないかと思います。これらはすべて、人間の倫理と他者との共存の問題とかかわっています。おそらく21世紀の学校教育では、国語、数学、理科、社会、英語という教科の枠を大きく組み替えることが求められるでしょう。そして、本日ビデオで見る「人間の生と性」を扱う総合学習や、「地球環境と経済システム」を扱う総合学習など、いくつかのトピックによる総合的かつ共同的な学びに移行するのではないでしょうか。皆さんが、今教えたいと思っていること、学びたいと思っていること、この感覚は、確かに21世紀の学びを予言しています。この感覚をぜひとも大切にしておいてください。教えても喜びと発見のないこと(自分自身にもなぜ学ぶか意味がわからないこと)は、当然ながら学び手にとっても学びたくないことです。これからは、教える側が解答をもっているのではなく、学び手との相互の学び合いのなかで答えを探っていく、そういう授業が求められているように思います。もちろん、教える側は、これまで以上に知識を習得し、学び、考え、一歩でも学び手より先に進もうとしなくてはなりません。

 《授業のテーマ集》

(1) 実存(生と死)と倫理についての授業

・「“盗みの問題”についてやろうと思う。今、中高校の中で万引きの事件が多くなっている。…授業では、『ビバリーヒルズ高校白書』のビデオをみて、話の中の少女の盗み、話の中ででてきた『レ・ミゼラブル』の主人公の盗み、そして現在の中・高生のこの盗みについて考えたいと思う。」(橙さん)
・「前からずっとやってみたいと思っていたのが、いじめと自殺問題です。私が高校3年生のとき、大学の付属校にいけるかいけないか、その評定が決まる最終のテストでカンニングが先生にみつかってしまい、そのまま屋上から飛びおりました。みんながテストをうけている間です。その子とは1、2年生一緒で友達も多く、私はとてもショックでした。だから、この友達の場合はいじめには関係ないと思いますが、いじめを苦に自殺してしまう生徒をテーマに、言われたらいやな言葉やいじめを見たら、そして私が友達が自殺して考えたこと、みんなは生きているんだから、こんなにいろいろできるんだよということを教えたい。」(Sさん)
・「“人生の壁” : 人は一生に何度も壁にぶつかる。小さな壁から大きな壁まで。そこで清原選手の大きな壁にぶつかった去年の教訓をもとにこの題におさまりました。アイディア+1として実演で去年と今年の構えを比較し、ここがこういう風に変わり、ここが強くなったなどアピールするのも良いかと。」(Tさん)


(2) 環境問題についての授業

・「水について : 現在はお店で水を売る時代です。これだけ水が豊富(世界随一)の日本なのに、なぜ水を売ったり、買ったりするようになったのでしょうか。お店で売っている天然水の味の違い、成分の違い、実際に飲み比べる。(水道水、東京中の違い)…」(Iさん)
・「リサイクル : ペットボトルとリサイクル商品をみせて『容器包装リサイクル法』を簡単に説明する→なぜそのような法律が出来たのか→ゴミ問題・資源問題 海外の現状と比較 リサイクルに対しての企業の対応 メリット『宣伝効果』/デメリット『費用』 について話す」(Oさん)
・「ゴミ問題について取り上げてみたいと思います。切り口として、実際に、ゴミの分別をクイズのようにして分けてもらい、そこから授業が展開していければと考えています。」(色吉さん)
・「私は最近、料理などに用いられるサランラップが燃えないゴミに分類されることを初めて知りました。そういう身近な物からゴミの分別を考え、その分別の少しの誤りからくる自然への影響を教えてみたいと思います。結構、身近な物は誤解が多いと思うので、まずどんな物があるかを出し、それはどのように(可燃、不燃など)分別できるかを考え、その後に実際に正しい分別を調べさせるということをやってみたいと思います。ただ、この解答は各市町村ごとにちがいます。だから、その市町村ごとのちがいも比較したいと思います。」(Kさん)
・「みんなの口にしているものは大丈夫? : このテーマから食料問題、食品の安全性について考える。遺伝子組みかえの野菜、ホストハーベストの輸入野菜など、安全な野菜、食品の研究、食品添加物、着色料の問題などに目を向け、環境問題とも関連づけ、授業をくりひろげる。」(Iさん)
・「食べ物について : (1)ダイエットが女性だけでなく男性も注目するなかで正しい食生活などから入る→例えば、砂糖を食べるとふとると思っている人がいるだろうけど、ふとる原因は直接には脂肪が強く関係している。野菜の正しい食べ方などから、食品の安全性へ。(2)食品の安全性→例えば、輸入食品に使用されている薬品(ホストハーベスト)問題、日本で売られている豚肉などがどうやって作られているか。(3)これからの消費者としてどうすればいいかを考えていく」(Sさん)


(3) 世界の国々についての授業

・「私はワールドカップを通して起こることなどを考えていきたいと思っているので、まず自分でワールドカップダイジェストならぬものを作成して、生徒にそれを見せることによって、話のきっかけを作りたいと考えています。そして、上位にくいこんだチームと日本の関係を追ったりすることで、経済、歴史についての授業を展開できたらいいなと思っています。」(Mさん)
・「世界史の授業で、国際交流と民族差別についてとりあげてみたい。国際化、国際化といっているものの、アメリカをはじめとする先進国との交流ばかりもとめている日本の社会について考えたい。身近なアジアを知らぬうちに、無意識のうちに差別している日本人。それはたとえば『あなたって中国人みたい』といわれるより、『あなたってパリジェンヌみたい』っていわれることの方がうれしいということ…」(とく名希望さん)
・「アメリカの自動車工業都市デトロイトはモータウンと呼ばれる。そして音楽にもモータウンというレーベルがある。主に黒人の音楽だが、デトロイトの黒人労働者の文化、社会的背景などをからめて、自動車工業都市デトロイトの授業ができると思う。」(Yさん)
・「先日、タイに行ったときのことだが、タイ国際空港からバンコクの中心に行く高速道路から見える光景は、戦後復興したばかりの日本を見ているようだった。…もっと身近な対東南アジア諸国との貿易について授業をやってみたい。」(Kさん)


(4) 経済と社会についての授業

・「生徒が参加しやすいように、何か役割をつけて学芸会みたいな感じで、1つのことを体験学習できるような授業にしたいと、今日の模擬授業を受けて思った。…例えば、株式会社のしくみ、みたいな感じで、○○さんは株主さん、○○さんは社長さんと、実際に役をあてがっていって、具体的にその人たちをうごかして、いろいろな説明をしていくような授業はどうでしょうか?」(Sさん)
・「税金制度の話をしたいと思います。税金というのは生徒の関心をひかない話題だと思うけど、私は少しでも場をなごませるためにクイズを取り入れた授業で、少しでも生徒が参加してくれる形をとりたい。例えば、長者番付などをもちだし、関心のある芸能人やスポーツ選手の部分などを用い、ところどころ空欄をつくって、生徒にうめていってもらうというなごやかな導入から、税金の種類や納め方などのかたいものもやる気をおこさせるような展開をしたい。」(Sさん)


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