『ぞうさん先生の子育てトーク』
鈴木洋(毎日新聞社、1999)
「こんにちは。ぼくは東京は下町、相撲の国技館のある墨田区で小児科のクリニックをしています。相撲は取りませんが、毎日病気と真剣勝負です。でも、おかあさん、おとうさん、赤ちゃん、お兄ちゃん、お姉ちゃんにはお相撲さんのように力強く優しく接したいと思います。」という手出しで始まる『ぞうさん先生の子育てトーク』は、町医者のぞうさん先生が子育てについて、自分自身の父親としての経験、そしてクリニックでの経験から温かくアドバイスしてくれる一冊である。そもそも毎日新聞の家庭欄に毎週連載のコラムで、楽しみにしつつ、読んでいた。私にはまだ子どもはいないが、同僚に最近子どもが生まれ、「ほんとうに大変ですよ。夜も眠れないし」という話を聞いて、やっぱり育児は想像を絶するものなのだと再認識させられた。たいへんな育児の時期に、このように温かく頼りになる町医者が近くにいれば、なんと心強いだろうと思う。私自身、もう一度人生をやり直すならば、町医者という選択肢もあるなあとぼんやり考えていたこともあり、地域社会がバラバラになりつつあるところで、ぞうさん先生の存在はとくに貴重だと思うのだ。ただ温かいだけでなく、専門家としてもきちんとしているところが安心のぞうさん先生なのである。