『やればできる学校革命』
武藤義男・井田勝興・長澤悟(日本評論社)
2000年代はじめの1冊として紹介するのは、学校を再生させた福島県三春町の教育長の物語。荒れる学校を教師と住民が力を合わせて変えていった三春町の教育については風の噂に聞いてはいた。しかし、そんなにうまくいく話なぞあるわけがないと思っていたところ、ちょうど国分寺の教育フォーラムで武藤義男氏の話を聴く機会があり、出かけていった。そこで、氏の地道な歩みとひたむきな改革への努力に感銘を受け、私の考えは180度転換した。生涯を一教師として歩んだ武藤氏が三春町教育長に請われたとき、日本列島は校内暴力の渦の中にあった。氏がそこで行ったことは、学校の現実を地域にオープンに示し、ともに考える呼びかけをすることであり、もう一つは手抜きではない、手作りの子育て、教育を創り上げていったことである。手作りの教育が地域の共同性を再生し、学校を中心として地域が蘇ったのである。近年、年末の高校駅伝で三春町の田村高校が活躍している。田村の選手たちは、ほかの常連校の選手たちのような駅伝に特化された身体とは違った伸びやかで力強い身体が印象的である。彼らの姿が三春の教育と重なってくる。この本は、教育長の武藤義男氏が、校長や建築家らとともに教育改革の可能性について語った1冊である。