『突破者それから』

宮崎学(徳間書店、1998)



 本書の著者宮崎学は、キツネ目の男として指名手配された破天荒なライター。京都のヤクザの御曹司として生まれ、学生時代は左翼運動にはまり、バブル時代には地上げに奔走し、今や社会派の物書きと、ジェットコースターのような人生を邁進している。最近、評者は宮崎学にはまっていて、『不逞者』に続いて二冊目の紹介となる。
 この『突破者それから』はバブル時代の地上げをめぐる人々の話である。悪徳弁護士を中心に、神保町の老舗のおやじや群馬のゴルフ場建設予定地の農家の人々など、カネに踊った人々の喜怒哀楽が何ともリアルに描かれている。日本社会は先の見えない不況に落ち込んでいるが、このルーツはバブル時代にある。バブル時代に対して、わたしたちは一億総懺悔する必要はないわけであり、責任者をきちんと明確にして、責任者のクビを叩ききる必要があるのである。それが日本社会をどんよりとした不況から救い出す有効な手だてであるにちがいない。そのためにも、感情論ではなく、バブル時代に一体どのようなことが起こったのか、地上げ屋の仕事は一体何だったのか、地上げの仕組みはどうなっていたのか、そして、肝腎の銀行はどのようにかかわっていたのか、こうしたことをきちんと知る必要があるように思う。そのためにも、当事者であった宮崎学の著作は、多くのことをわたしたちに教えてくれる。