『世界の学校から』
渡部淳(亜紀書房、1989)
「帰国生たちの教育体験レポート」という副題をもつこの本は、世界25ヶ国で学び、帰国し、日本の学校に復学した子どもたちの作文を、ICU高校の教師である渡部淳氏が編集した1冊である。1編1編の子どもたちの作文は、日本の日常の学校生活の風景を異化する装置となっており、本書は、子どもの目からみた比較文化のフィールド・ノート集であるといえる。授業、テスト、体罰、校則などについて、子どもたちの観察は実に細やかで確かなものがある。日本の学校の特徴として体罰が描かれており、その傷跡は癒しがたい。なかには、「先生のみだしなみ」というタイトルで、オシャレで魅力的なアメリカの女性教師と、上下ジャージでボサボサの爆発ヘアの日本の女性教師が描写されているもののある。本書を読み進めると、日本の学校、教師とのかかわりのなかで否定的な経験が多く語られていることに気づかされる。10年前の子どもたちの観察と提言は、日本においても学びのクリエーターと人権の擁護者として教師の専門性を確立する必要性を示している。