『NLPのすすめ』
ジョセフ・オコナー、ジョン・セイモア(チーム医療、1994)
NLPとは、ニューロ・リングイスティック・プログラムの略であり、1970年代のアメリカで誕生した実用的な心理療法の方法である。自分と他者のコミュニケーション・タイプに気づく方法や人がよく用いる言語の構文を通してある思いこみが健全な思考をどのように制限しているのかに気づく方法が叙述されている。例えば、比較の構文をしばしば使用する人は、「私はあの会合で下手な運営をした」などと考え、自責の念にとらわれることが多い。そこで対話者(自己内対話もできる)は、何に比べて下手と考えたのか、どこに問題があったのか、次にやるときはどこを改善するか、などの揺さぶりをかけて、狭まった思考を拡げる援助をする。このような対話を進める中で、比較の構文の中に、いつもスーパーマンと比較している自分がいることに気づく場合がある。そうすると、比較によって得るものは、決して次の仕事へのモチベーションではなく、自分は無能だという思いこみであることが明らかになる。本書では、このような具体的な例がいくつも語られているが、最も印象に残ったのは、リフレーミングという考え方であり、経験をさまざまな付置の中で捉え直すという力を高めることは、現代のような混沌の時代において、自己を肯定し、他者を肯定しつつ生きるための意味あるトレーニングである。この観点で、ライフヒストリーの仕事とメンタルケアの仕事は一つの統合の可能性をもっている。