『もしインターネットが世界を変えるとしたら』
粉川哲夫(晶文社、1996)
本書の著者粉川哲夫は、東京経済大学教授。ラディカルなメディア批評家で、その精神の若さ、伸びやかさ、果てしない逸脱への構えに、日々、私は感嘆しながら、遠くから憧れている。最近、時間がないので、あとは引用に委ねることとする。
「日本社会は、これまで一般に、集団思考が強いとされてきた。実際、集団のなかで自己主張するよりも、まわりと馴れ合う方がよしとされ、それがすぐれたチームワークを生み、また同時に滅私奉公的な環境を作りもした。そうした傾向は、いまでも続いているが、微妙なレベルに注意すると、八〇年代の後半ごろから若干様子が変わってきた。…
マルチメディアとマルチ社会・文化は切り離すことの出来ない関係にあるのであり、日本の政治がそうしたマルチ社会や文化を活気づけることに意をそそがないかぎり、マルチメディアは不要であり、従って普及することもないということである。ここでも、必要なのは、単なる技術の選択ではなく、情報資本主義の動向を見据えた抜本的な政策と政治である」
インターネットというメディア・ツールを通してみた、刺激的な文明論である。