『教育農場五十年』

留岡清男(岩波書店、1964)



 いきなり1960年代の古い本である。東京経済大学の図書館の閉架書庫から探し出した一冊である。昨年の夏、私たちのゼミでは、北海道で合宿を行った。そのときに、オホーツク海も間近な遠軽の北海道家庭学校に立ち寄った。強行軍でわずかな時間しか滞在できなかったが、私には、人里離れて、日夜営まれている北海道家庭学校の教育実践の重さが心にずっしりと残っている。北海道家庭学校では、教師たちは夫婦で非行少年たちと寝食をともにしながら、生活を通して矯正教育を行っている。学校内には、山があり、農場があり、そこで労働によって自らの糧を得、技能を身につけている。この営みが、1914(大正3)年に留岡幸助によって開設されて以来、脈々と継承されているのである。本書は、留岡幸助から引き継ぎ校長を勤めた次男の留岡清男が、同校五十年間の歩みを綴ったものである。観念ではなく、具体的な事実に即しながら、葛藤や対立、叱責、挫折も覆い隠すことなく、綴られている。ひたすら迫力を感じる一冊である。