『教育カウンセリングと交流分析』

杉田峰康(チーム医療、1988)



 嗜癖関係の家族論が続いたところで一休みして、交流分析関連の本をいくつか紹介したい。著者の杉田峰康は、1933年生まれの臨床心理学者であり、チーム医療(カウンセリングのワークショップ、出版活動などをやっている)の講師として活躍している。この本では、フロイトの精神分析学の口語訳版であるといわれる交流分析の考え方をもとに、教師、親の自己認知を助け、生徒や子どもとのコミュニケーションのメカニズムへの気づきについての理論がわかりやすく説明されている。自分の心の中に潜む自我を、P(親)とA(大人)とC(子ども)に分節化して捉え、そのいずれが優勢であるかに気づくことは、よりよいコミュニケーションのあり方を探る上で役に立つものである。とくに、C(子ども)をFC(フリーチャイルド)とAC(アダプティットチャイルド)に分けて、自分自身の開放と過剰適応の問題に迫る方法は、自分らしい生き方を探るためにある有効性をもっている。書評者自身、何度か交流分析のワークショップに通い、著者をはじめとする交流分析の達人たちの魔法を操るような見事なカウンセリングの腕前を目の当たりにしており、この方法の効力には疑いをはさみようがない。ただ、交流分析を自分自身への気づきとしてではなく、人間関係のツールとして学ぼうとするとき、かえって自分自身との親密性を見失うということがあるように思われる。これはどの心理学の理論であっても同じだろうが、心の理論は自らの心の歪みに気づくためのものであり、人の心をコントロールするためのものではないことを強く心得ておく必要があるだろう。