『共依存』
メロディ・ビーティ(講談社、1948)
本の紹介文より「頼まれなくても他人の世話に明け暮れる。相手を喜ばせようといつも自分は後回し。そして、思いどおりにならないといって腹を立てる−この本は、自分の人生を他人に捧げてしまった『共依存者』への処方箋である」
共依存者というのは、そもそもアルコール中毒症の患者のパートナーをさす言葉であり、他人をケアすることに依存している人を捉えた概念である。これもさまざまな嗜癖と同じように、自己肯定感に乏しく、「この人は私がいないとやっていけない」という犠牲者のヒロイズムによってのみ自己の存在意義を確認するという特徴をもっている。共依存は、けなげな人に見えるため、アルコール嗜癖や薬物嗜癖以上に、自分自身の問題に気づきにくいというやっかいさを抱えている。
あらゆる嗜癖は、自分自身との関係のゆがみであるように思える。自分を見つめることの「おそれ」を他者に投影し、他者への「おそれ」が生まれ、そこに他者からつけ込まれるという隙が生じる。最も根っこにあるのは、自分の権利を守るすべを知らない悲しみである。そうであるからその回復には、自分の存在が守られるべきものであること、自分の権利は守られるべきであり、同じように人の権利を守られるべきであるという信念を、自分のなかで育てていくことが求められるのである。この本は、共依存だった著者がやさしく、やわらかく、背負い込まずに気楽に生きていくためのセルフヘルプのナビゲートをしている一冊である。看護婦や介護士、教師など、共依存に陥りやすい職業の人たちにも捧げたい。