『自分らしく生きる−同性愛とフェミニズム』

落合恵子・伊藤悟(かもがわブックレット、1998)



 本書の著者の一人、落合恵子は、文化放送のアナウンサーを経て、作家生活に入る。女性の側から性暴力を告発した小説『ザ・レイプ』のほか、女性が女性として生きることを表現し続けている。また、子どもの本の専門店「クレヨンハウス」と女性の本の専門店「ミズ・クレヨンハウス」を主宰している。もう一人の著者伊藤悟は、1993年9月に自らが同性愛者であることを公言し、パートナーのやなせりゅうたとともに「すこたん企画」を設立した。それからは、執筆や講演活動を通して、同性愛者として生きるということがどのようなことなのか、わかりやすいことばで語り続けている。
 この本は、同性愛者とフェミニストのために書かれた本では決してない。「ふつう」という得体の知れない化け物に自分を合わせようとそれだけを一生懸命に生きている、「ふつう」の人々のために書かれた本だと、わたしは思う。わたしたちは、空虚な「ふつう」の世界に自分を合わせようとして、挙げ句の果てには「透明な存在」になることさえある。少数派として、何度も何度も傷つきながら、自分自身のそのままを受けいれるたたかいを生き続けている2人のことばには、言いようもない重みと輝きがある。伊藤さんとの出会いの中で、傷つくことを恐れている自分自身に改めて気づかされた。「普通の子が危ない」という話を頻繁に耳にするようになった。そろそろ「ふつう」のもろさに気がつかなくてはならない頃だ。「ふつう」にギクシャクしつつある人にとって元気が出る一冊。