『ジャン・クリストフ』

ロマン・ロラン(岩波文庫)



 1900年代の最後を飾る日々ということで、古典小説の世界に連続してご案内したい。なんて格好いいことを言ったが、実は本日は1999年12月30日。何とか今年中に本のページを追いついておきたいということで、昔読んだ作品から紹介することに。
 『ジャン・クリストフ』は、20世紀を代表する作家ロマン・ロランによる大河小説。音楽家のジャン・クリストフは、さまざまな試練に直面しながら、人間として成熟していく。もうここで終わり(安定)かと思うと、次に新しい試練、そしてそこを乗り越えると新しい地平が拡がっていく。これが何度も繰り返され、生きるエネルギーをたくさんもらったように思う。考えてみると、『ジャン・クリストフ』を読んだのは、大学の2年あるいは3年の頃、この時期に読んだ本は、思いの外、内容も克明に覚えている。最近、読んだ本は次の日には忘れているというのに。大学時代に読書をすることは意味のあることなのだと今思った。『ジャン・クリストフ』で好きなのは、叔父のゴットフリートの存在である。うだつが上がらず、世間的には評価されなかったゴットフリートは、ジャン・クリストフの成長においてはかけがえのない人物だった。ゴットフリートは、ジャン・クリストフの話に耳を澄まし、温かく見守ってくれた。この文章を書くことは、子どもにとって、ゴットフリートのような存在が何よりも大切だということを再び思い出す機会となった。