『インナーチャイルド』
ジョン・ブラッドショー(NHK出版、1993)
この本は、傷ついたインナーチャイルド(心の内なる子ども)を癒すことで、恐れを手放し、生きるパワーを回復するためのワークのテキストである。フロイトの精神分析の流れを汲む交流分析の考え方とエリク・エリクソンの発達理論を統合し、私たちの失われた子ども時代を生き直し、そのとき抑圧した感情に出口を与えることにより、過去にコントロールされない大人としての生き方ができることが示されている。著者のブラッドショー自身、アルコール依存症の父をもち、機能不全の家族の下で育ち、大人になりアルコール依存に悩まされ、社会的な成功をおさめながらもいつも自己否定の悲しみに襲われていた。こうした中で、アリス・ミラーの文章に出会い、回復のワークに取り組む決意をしている。この本は、著者自身の回復の過程を、発達理論と重ね合わせ、他の人にもわかりやすく、ワークを再現できるように伝えた癒しの書である。本書は、いまや、アダルト・チルドレン理論の一つの古典とでもいうべき存在になっているといっても過言ではないだろう。