『子どもの自分くずし、その後』

竹内常一(太郎次郎社、1998)



 本書は、日本の生活指導の理論の担い手であった竹内常一の『子どもの自分くずしと自分づくり』の続編。思春期の子どもの自立を、中年期を迎える親の危機との関係において捉えているところに、興味を惹かれた。親は子どもの非行、不登校などの「問題行動」にさらされることで、それまでの半生を問われる経験をする。そのとき、総じて親は三つの対応のいずれかを選ぶという。一つ目は、自らの危機に目をふさぎ、子どもの自立を妨げ、破滅に追いやる道、二つ目は、ともに危機のなかで自滅していく道、三つ目は、危機を受けとめ、これまでの生き方を変革する道である。この経験は、親にとっても、子どもにとっても、厳しい経験であるが、三つ目の道を生き抜くしか方法はない。いや、中年期にすべての問題が噴出する前に、国家や企業の下請けではない、自分自身の生き方を見つめていくことが求められる。あるいは、今までは一つ目の道でも、それなりの人生が可能であったのかもしれない。しかし、自立しなくては生きていけない時代がやってきた。子どもからのプレゼントを受けとめ、「良しを断つ」(北海道森のおじじのことば−これでいいという安逸さを断ち切る−)歩みを選びとること、これがこの本から大人へのメッセージであろう。