『総合学習を創る』
稲垣忠彦(岩波書店、2000)
著者の稲垣忠彦(先生)は教育方法史の研究者。『明治教授理論史研究』では、明治期における教育方法の受容と定型化について論じている。本書では、2002年度から全国で実施され、学校再生の切り札として考えられている「総合学習」が、日本の教師による教育実践というレベルでは、1世紀以上の歴史をもつことを論じ、続いてアメリカの実践やイギリスで行われているトピック学習を紹介した上で、今、日本の学校で行われている教師たちの取り組みについて取り上げている。((註)稲垣先生は大学院時代の恩師の一人であり、私の指導教官佐藤学先生の師である)
紹介されている事例のなかで、私が印象に残ったのは、埼玉県新座市立池田小学校の室田明美先生の「妙音沢」の実践である。室田さんは、やわらかさと芯の強さを兼ね備えた小学校の先生で、その教室は子どもたちの作品と憩いの場(丸太などもある)でうるおいに満ちている。室田さんは、子どもたちを連れて、武蔵野の面影の残る雑木林に出かけ、そこに生息する「カタクリ」の一生を紙芝居にするなど、自然(地域)と子どもたちを出会わせる実践をひらいている。「総合学習」は、教師が問われる学びの場である。