『内破する知』
栗原彬・小森陽一・佐藤学・吉見俊哉(東京大学出版会、2000)
本書は、政治学、文学、教育学、社会学を専攻する4人の知の旗手たちが、それぞれの専門領域を根底から問い直し、身体から滲み出る知、他者性のある知を立ち上げていく、現在進行形の知の営みである。この4人は、それぞれが自分の語り口をもっており、専門領域において確固たる評価を受けている人々である。にもかかわらず、「私たちが創造し表現している知は、どれほど現実社会に棲息する人々の声に呼応し、生身の身体の鼓動と切り結んでいるだろうか」と自省し、その「知の越境」を「私たち一人ひとりの身体が受苦し引き裂かれている具体的な実践の場における主体の闘争として、さらにはその言説的実践によって<内破>するダイアローグの挑戦として遂行しようとしている」のである。
あたかも現実を中立的立場から捉えることができるように見せかける実証主義と、現実はすべて虚構であるとする構成主義に対して、両面作戦を挑みつつ、狭き門を突きすすむ、著者たちに、圧倒され、困惑し、そして勇気づけられた。