『見えないものを見る力』

石川淳志・佐藤健二・山田一成(八千代出版、1998)



 本書は、社会調査について、その方法をわかりやすく開示するのみならず、社会調査をめぐる「社会認識論」を射程に入れ、丁寧に議論したガイドブックである。社会調査は、社会の現実を捉えるものとして一般には考えられているが、実は、社会調査自体が社会の現実を創出しているともいえる。本書は、社会調査が現実を構成するという事実−すなわち、研究者の営み−に自覚的であり、社会調査を一つの反省的実践としていくつもの角度から捉え直している。これまでの社会調査論のテキストは、多くの場合、調査方法の技術マニュアルというべきものであり、知的刺激を得ることが少なかった。しかしながら、本書は、現場(フィールド)中心の面白さと、実践を通した社会認識論の深まりがあり、エキサイティングなテキストに仕上がっている。