『経済ってそういうことだったのか会議』
佐藤雅彦・竹中平蔵(日本経済新聞社、2000)
ある新聞の書評で絶賛されていたので、経済学音痴の私としても、何のはずみかで経済大学に勤めることになったわけだし、ちょっと読んでおくかと思い、手にとったのがこの本だった。ところが、私が頭が悪いためか、さっぱり面白さがわからなかった。前書き「こうして会議は始まった」に、「エコノミクスって、ギリシア後の“オイコノミコス”から来ているんです。オイコノミコスとはどういう意味かといいますと、共同体のあり方、という意味なんです」という文章があり、本書で経済学がどのような共同体のあり方を示してくれるのかと、ワクワクしながら読みはじめたのだが、最後まで共同体のあり方を考える手がかりになるような話に行き着くことはなかった。こんなことを書いていると、「経済あってこその心だとか生き方の問題。そういうことがわかっていないから、教育学者はダメなんだ」という声が聞こえてきそうだが、経済学そのものをけなしているわけではない。私は、同僚の経済学者の方々の講義をいくつか受けてみたことがある。そこで、まさに共同体のあり方を問う、エキサイティングな経済学の存在を知り、とても興味深く感じた。しかし、私は、本書の中で、経済のしくみはある程度わかっても、経済学が私たちのくらしをどのように支えてくれるのか、すなわち、新しい公共性をうち立てていく手がかりを見出すことはできなかった。なぜ個人の起業努力の問題ばかりが議論されて、問題だらけの公共事業のあり方、経済学がここを避けては通れないと思われる大量消費社会と環境問題がほとんど議論されないのか、疑問は残るばかりである。