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インターネット通販の現状と課題
丸谷雄一郎(maruya@aichi-uac.jp)
目次
T はじめに
U インターネット通販以前の消費者向け電子通販
V インターネット通販の現状
W インターネット通販の課題と展望
X 結びにかえて
T はじめに
我が国の通信販売業界の成長はカタログ通販によって支えられてきた。日本通信販売協会の調査によると、通信販売における媒体別売上高構成比はカタログが50.7%、ちらしが15.6%、その他の自社媒体が5.9%であり、自社媒体のみで72.2%を占めている。他社媒体は全体でも5.8%に過ぎず、自社媒体の比率はほぼ企業の売上規模に比例して拡大している(1)。しかし、我が国の通信販売業界は転換期を迎えつつある。成長を続けてきた業界全体の売上高が減少し、1986年以降売上高首位を守ってきたセシールが首位から転落した。この2つの出来事はカタログを中心媒体に発展してきた通信販売業界が新たな局面を迎えていることを示している。
以上の問題意識に基づいて、通信販売について改めて検討してみると、多様な問題が指摘でき(2)、その問題の1つがニューメディアへの対応である。このことは既存顧客の利便性の向上と新規顧客の獲得のために不可欠であり、特に、インターネットを利用した通信販売は有望であると考えられる。
本稿では、第1にインターネット通販以前の電子通販に関して検討し、第2にインターネット通販の現状を検討し、第3にインターネット通販の課題について検討し、今後の展望を示す。
U インターネット通販以前の消費者向け電子通販
インターネット通販は消費者向け電子通販の1つであり、インターネットが一般化する以前にも消費者向け電子通販は存在した。今日行われている商取引の多くはその起源が明確ではないが、消費者向け電子通販は開始時期が明確な数少ない例外である。
我が国における消費者向け電子通販はインターネット以前においてはビデオテックスとパソコン通信を中心に発展してきた。以下ではビデオテックスとパソコン通信についてその普及過程と問題点を検討し、最後にそれらのメディアを利用した通販に関して若干の検討を行う。
1.ビデオテックス
ビデオテックスは一般の電話回線により、利用者端末を情報センターに接続し、文字や図形の情報を利用者端末に表示する双方向通信機能を持った画像通信システムである。1970年代後半から1980年代初めにかけて、先進工業国はビデオテックスの実験を開始しており、これを利用した商品の販売、各種の情報提供サービス、銀行等の金融機関との消費者向け電子商取引が開始された。我が国では、郵政省と電電公社が中心となり、1979年12月から東京23区内で実験サービスを開始し、1984年11月に商用化サービスを開始した。しかし、ビデオテックスは各国で実用化されたものの、フランスにおいて成功したのを除いて現在ではパソコンに代替されつつある(3)。
2.パソコン通信
パソコン通信は1980年代に入って、パソコンの普及にともなってその利用者数を増大させてきた。ニューメディア開発協会の調査によると、パソコン通信サービスを1985年以前に開始していたパソコンネット局は20社に過ぎず、パソコン通信が本格的となったのは1980年代後半に入ってからである。パソコン通信サービスを開始した時期も90年にピークを迎え、その後減少を続けている。その後、パソコン通信は徐々に家庭に浸透した。ちなみに、パソコン通信最大手のニフティサーブの会員数は94年6月時点で75万4,000人であり、ビデオテックスの契約数が1995年1月時点で166,173であるのと比べるとその普及率の高さは明らかである。
その後、大手パソコン通信業者がインターネット・プロバイダー化し、インターネット利用のためにパソコン通信への会員数は急増した。ニューメディア開発協会の調査に基づいた推定では、1998年6月現在でそののべ会員数は約957万人となっている(4)。
3.インターネット通販以前の消費者向け電子通販の問題点
通信媒体はニューメディアと呼ばれたビデオテックス、パソコン通信を経てマルチメディアと呼ばれるインターネットを中心としたものへと変化してきた(1図)。それに伴って、消費者向け電子通販も変化してきた。消費者向け電子通販はその普及のためのサービスとしてビデオテックス、パソコン通信といったニューメディア期において導入が進められた。ニューメディアU期には、パソコン通信を利用した通販はCD-ROM併用型と呼ばれるタイプを含めて徐々にその市場規模を拡大した(5)。しかし、ニューメディア期、ニューメディアU期には、ニューメディアの普及がそれ程なされず、それを利用した消費者向け電子通販も期待ほどは普及しなかった。
醍醐はビデオテックスが普及しなかった理由を3つをあげている(6)。
1.その時代の技術では操作性の面で利用者を十分に満足させる事は不可能であった。 2.パソコン等を利用出来ず専門端末を必要とした。
3.当時はサービスの基盤即ちハードウェアや通信プロトコルの整備等に重点が置かれ、 その上で提供されるサービスの質まで考える余裕がなかった。
また、パソコン通信が普及しなかった理由は以下で示す東京都の示したパソコン通信普及のための検討課題に示されている。
1.通信料金の値下げ
2.通信サービスのメニューの拡充
3.サービス内容の高度化
4.操作の簡略化(7)
上記であげられた2つのメディアの普及に関する問題点は改善されてはいるが、インターネットの普及においても、重要な問題である。特に、ビデオテックスの問題点として指摘された操作性とサービスの質はパソコン通信の検討課題としても指摘されており、インターネットにおいても問題点であり続けている。また、パソコン通信の検討課題としてあげられた通信料金の問題もインターネットの普及阻害要因の1つであり続けている。
これらの問題点はニューメディア並びにインターネットの普及阻害要因であると同時に、これらのメディアを利用した消費者向け電子通販全体の普及阻害要因でもある。ニューメディアは普及の段階で大きな障害に直面し、消費者向け電子通販のノウハウを蓄積するところまでいかなかった。そのため、これらの問題点は解決されぬまま、現在に至っている。
しかし、パソコンの普及率とネットワーク接続比率が上昇し、今後もパソコンのネットワーク接続が進むと予測される状況において、既存媒体以外を利用した通販市場が誕生する条件が整いつつある。インターネット通販において成功している企業は現状では一握りである。彼らの失敗の理由の多くはニューメディアの普及時点で明らかとなった問題点を解決しないままでいることであり、これらの問題点を改善していけるかどうかはインターネット通販の今後の成長に大きく影響すると考えられる。。
V インターネット通販の現状
1.インターネットの普及状況
インターネットはネットワーク全体の管理者がいないオープンシステムであることから、利用者数等の基礎的なデータすら正確に把握するのは難しい。また、歴史が浅く各種統計に用いられる概念についてもまちまちであるなど、統計の整備が進んでいないこともこの傾向に拍車をかけている(8)。しかし、インターネット通販の動向は既存通販と同様にその利用媒体であるインターネットの普及状況によって規定される部分は大きいと考えられる。そこで、インターネットの普及状況を多様な調査から推定してみる。
インターネットは近年パソコン以外にも「インターネットテレビ」や「家庭用テレビゲーム機」においても接続が可能になっているが、やはりパソコンを利用した接続が大部分を占めている。郵政省の通信利用動向調査によると、パソコンの保有率は平成9年28.8%、インターネット接続者は6.4%であり、前年に比べてそれぞれ6.5%、3.1%増加している。野村総研の調査によると、パソコンが家にある人の率は35.7%であり、家で自分が使っている人の比率は18.3%であり(1998年3月時点)、この比率は前年比それぞれ7.8%、4.1%増加している。そして、ネットワークに接続されているパソコンの比率も41.2%であり、前年比8.4%増加し、パソコンの接続頻度もかなり高い数値であり、39%の利用者が1日に1回以上ネットワークに接続している。
さらに、職場や学校でパソコンを利用している人は全体の31.1%であり、かなり高い比率を占めている(9)。これらの数値から家庭でのネットワーク普及率を推計してみると、パソコンの普及率35.7%で、そのうち41.2%がネットワークに接続されているのだから、パソコンのネットワーク接続率は11.2%となる。その利用率及び利用者数に関して、日経マーケットアクセスの調査によると、インターネット利用者は1998年9月末時点で11.0%の1,150万人であり、前年比2.8%の290万人の増加としている(10)。ニューメディア開発協会によると(1998年6月時点)、インターネット利用者とパソコン通信利用者の合計は約956.8万人であり、前年の約789万人から大幅に増加している。
既述のように、上記の4つの調査はその調査主体や調査対象が異なるため、数値に若干の違いが生じた。しかし、これらの3つの調査の数値を検討してみると、我が国のインターネットの普及状況が明らかとなる。郵政省、野村総研、日経マーケットアクセスの調査は利用者側の調査であり、情報通信ネットワーク加入者としてのインターネット接続可能状況、パソコンのネットワーク接続状況、インターネット利用者数というような表現の相違があり、調査時期も郵政省が1997年10月、野村総研が1998年6月、日経マーケットアクセスが1998年9月と若干異なるために、その比率はそれぞれ、6.4%、11.2%、11%と開きが生じている。
また、ニューメディア開発協会の調査はその対象がインターネットプロバイダーであり、その数値も各プロバイダーの自己申告数を単純集計したものであり、かなりの利用者が複数のネットに加入していること、この数値には若干のパソコン通信のみの利用者数も含まれていることを考慮すると、実質のインターネット利用者数はこれより少ないと考えられる。
一方、企業内や大学等の職場でのみ利用している利用者も増加していることを考慮すると、この数値よりも多くのインターネット利用者がいるとも考えられる。ちなみに、日経マルチメディアの調査(1998年6月実施)によると、インターネットへのアクセス場所は家庭が41.46%、職場が56.58%、学校が1.97%である(11)。この調査は家庭、職場、学校の双方で利用している人のことが考慮されていないので問題もあるが、家庭のみの利用者よりもかなり多くのインターネット利用者がいると考えられる。
以上のことを総合的に考えると、我が国のインターネット普及率は1割前後の1,000-1,200万人程度と推定できる。
2.インターネット通販の現状
インターネットが急激に普及するにつれて、インターネット通販の利用者も増加しつつある。インターネット通販に関しても多様な調査がなされており、その数値もまちまちであるが、代表的な調査の数値からその現状を検討してみる。
(1)利用者の割合
日経マルチメディアのインターネットユーザーを対象にした調査(1998年6月実施)によれば、インターネット・ショッピングの利用経験率は47.5%と5割に迫った。同調査は1995年12月から半年ごとに行われてきたが、利用経験者の比率は毎回上昇しており、前回の調査(1997年12月実施)と比べても6.8%の上昇を示した(12)。日本通信販売協会の同協会のウェブを利用した調査でも、インターネット通販の利用経験率は54%であり(13)、通販利用者の比率はインターネット利用者の5割程度であることがわかる。
(2)利用者の属性
利用者の属性はインターネットが普及し始めた当初は絶対数だけではなく、その利用者の比率も男性が多く、新規顧客開拓のための有力メディアとしてインターネットがもてはやされてきた時期もあった。そして、利用者の絶対数は男性が多いことは変化していない。このことはインターネット利用者の絶対数に起因しているとみられる。既述の野村総研の調査によると、パソコンネットにおける女性会員の比率は1992年6月の7%から1998年6月の19.8%へと大幅に増加しているが、それでも男性の4分の1以下である(14)。
しかし、女性のインターネット利用者が増加する中で女性の比率が上昇しつつある。既述の日経マルチメディアの調査によると、通販利用経験者が1995年12月には女性11.9%、男性14.5%であったのに対して、1998年6月には女性61.7%、男性45.5%と逆転している。この状況は1995年12月時点で「まだ利用したことはないが、今後買い物をしてみたい」と回答していた女性(以下利用希望者)がインターネット通販を確実に利用し始めていることを示している。このことは1995年12月時点の女性の利用経験者が11.9%、利用希望者が67.7%であったのに対して、1998年6月時点の女性の利用経験者が61.7%、利用希望者が20.9%となっており、両者をそれぞれ足した比率にそれ程大きな相違がないことから推定できる(15)。インターネット利用者が若年層を中心に拡大していっていることを考慮すれば、既存通販の主要ターゲットである20歳代、30歳代の女性がインターネット通販の利用者層と重なってきたことは既存通販業者にとっては有利な条件である。
(3)購入商品
購入商品は日経マルチメディアの調査によると、書籍・雑誌が22.84%で第1位、パソコン(周辺機器含む)が21.97%で第2位であり、この2つが他を圧倒している。その他には、食料品の8.73%、ソフトウェア(パッケージ配送)の8.00%、CD・ビデオソフト・ゲームソフトの6.99%、ソフトウェア(ダウンロードの形態で)の6.72%であり、その他は5%未満である(16)。日本通信販売協会の調査でも、コンピュータ(ハード・ソフト)が43%で第1位、書籍・文具が28%で第2位、第3位は食料品の24%であり、結果に大きな相違はなかった(17)。
コンピュータが多いのはやはりインターネット利用者の多くがコンピュータを利用してアクセスしているからであり、その単価が高いことから今後とも重要な商品であると考えられる。食料品を除いた上位の購入商品にはコンピュータでの検索に向いた商品であるという特徴があり、既存通販の主要商品である衣料品、化粧品、アクセサリーなどと異なり、商品の質が一定の情報によって理解しやすい探索型の商品である。
探索型商品はその比率は低いが、今後成長していく可能性が高いと考えられ(18)、日経マルチメディアの調査でも、航空券、鉄道の切符、ホテルの予約は3.09%を占めている(19)。これらの予約ビジネスはインターネットの特性である双方向性、即時性を生かすことが可能なものであり、これらの特性を生かすという点では外資系の多くで導入されている保険や投資信託などの金融商品の販売も今後有望であると考えられる。
流通問題研究協会の調査によると、販売事業者が消費者向け電子商取引で取り扱う商品の特性として最も重視しているのが、「特定の地域以外では入手困難」という項目であり(20)、NRIサイバービジネス統計によると、この特徴を持つとみられる「フード&ドリンク」を取り扱う出店者数も3169と他を圧倒している。しかし、食品の売上は出店者数に比例するほど大きくなく、販売事業者の重視する特性が必ずしも消費者のニーズと合致しているとはいえない。
(4)決済方法
決済方法については、セキュリティと個人情報保護という観点からインターネット通販では常に問題とされてきた。日本通信販売協会の調査によると、インターネット通販非利用者が利用しない理由の1位にあげているのが「決済時の個人情報の流失の危険性」であり、38%を占めている。この傾向は利用者にもあらわれており、インターネット通販の不安に関する質問で「個人情報の送付」が30%を占めている(21)。
こうした傾向にもかかわらず、上記の調査によると、インターネット通販の決済方法で最も多いのが「クレジットカード」で50%を占めている(22)。しかし、このことが「クレジットカード」を消費者が好んで利用しているということを示しているのではない。日経マルチメディアの調査によると、決済方法の第1位は銀行・郵便振り込み(32.81%)、第2位が直接ホームページでクレジットカード番号を入力して決済(29.48%)、第3位が代引引換(10.89%)、第4位がFAXや電話でクレジット・カード番号を通知して決済(10.89%)である。この調査でも第2位と第4位をあわせるとクレジットカード利用が決済方法の第1位であるが(23)、クレジット・カード利用者のうち4分の1以上がわざわざFAXや電話でカード番号を通知していることはインターネット通販利用時のクレジットカード利用の不安の強さを示しているデータといえる。
また、通販事業者もこの不安に対応してカード番号をオフラインで取得したり、暗号化通信のできるサーバーソフトを利用し始めている。日本のサイバービジネス統計によると、サイバービジネス業者1025社のうち412社がカード番号をオフラインで取得しており、暗号化通信のできるサーバソフトも207社で利用されている。しかし、特に手段を講じていない業者も147社あり(24)、今後の対策が望まれる。
W インターネット通販の課題と展望
インターネット通販は前節で述べたようにインターネットの普及にともない段階的に普及しつつある。それにともなって、インターネット通販以前の電子商取引での問題点は改善されつつある。また、利用者層は男性中心から女性にも拡大しつつあり、既存通販企業の主要ターゲット層に拡大しつつある。購買商品は未だコンピュータ関連商品など一部の商品に限られているが、規格が一定の探索型商品に関しては今後非常に有望な市場であると考えられる。
しかし、インターネット通販が今後その市場を拡大していくためには課題も多い。第1は「個人情報の流失」といったことに対する消費者の不安を取り除くことである。既述のように、この点はインターネット利用者、非利用者に限らず最も強い不安を抱いており、この不安を取り除くことがインターネット通販の利用層の拡大に不可欠である。政府も通商産業省を中心に確実で安全な電子決済システムとしてのクレジット取引が確立することを目指してECクレジット取引調査研究委員会などを通じて調査研究(25)を行ってきた。さらなる電子マネーなどを含めたインターネット通販の決済に関するセキュリティの確保が期待される。
第2は既存の通信販売とインターネットショッピングを比較した時に(26)目立つデメリットの克服である。主要なデメリットは「能動的なアクセスの必要性」、「比較購買の困難性」、「顧客が負担する取引コストの高さ」である(27)。
「能動的なアクセスの必要性」という問題はホームページの情報の質の向上によってしか解決できない。インターネット通販で現在成功している企業の多くが探索型商品を取り扱っている企業であるということはこれらの企業が提供する商品検索システムが利用者に十分なメリットを提供していることを示している。
このことは企業の情報提供方法に再考を促す可能性があり、能動的なアクセスが行いやすい環境づくりが求められる。そして、環境づくりの際には、「比較購買の困難性」と「顧客が負担する取引コストの高さ」を克服する方法が取り入れられる必要がある。
前者を克服する方法として考えられるのが他社商品を含めた情報検索システムや他社のホームページとのリンクなどであり、近年注目される自動車のインターネットディーラーはこれまで比較購買が困難だった自動車流通の盲点をついた事例である。
後者を克服する方法として考えられるのが能動的なアクセスを行った利用者に対するインセンティブの提供である。多くの企業が「割引」をインセンティブとして提供しているが、これは非常に安易な方法であり、インターネットを利用することによって安価な商品を提供できる商品のみに可能な方法である。この方法と同時にインターネットの特性を利用した他の方法を考える必要がある。インターネットは大量情報の低コストでの提供、双方向性、リアルタイム性にメリットがあるわけであり、この特性を利用した個別対応のシステムの構築が有効である。具体的には、問い合わせに対する回答の質の向上とアクセスがあったユーザーへの有益な情報の定期的な送付(28)である。
X 結びにかえて
インターネットは世界規模の媒体であり、それを利用した通販は外国の動向が最も反映されやすいといえる。対国内と対国外を比較した場合、対国外のカタログの配送コストは高い。また、通信コストも電話であれば外国に対しては通信コストが高い。
しかし、インターネットを利用すれば、情報の送信コストも通信コストも国内とそれ程かわらない。配送コストの問題は残るものの、国際宅配システムが普及してくればこの問題は小さくなると考えられる。インターネットはその他の媒体を利用した通販よりも外国市場への参入障壁が低いのである。そうした意味で、インターネット通販においては、日本企業も外国市場と対等の競争を強いられる。
本稿では我が国のインターネット通販の現状と課題を検討した上で若干の展望を示した。今後はインターネット通販の先進国である米国の事例を中心に検討し、インターネット通販の世界的動向について検討していきたい。
注
(1)日本通信販売協会、『第15回通信販売企業実態調査報告書』、1997年、10-11ページ。。
(2)ここで述べた通信販売に関する多様な問題に関して詳細は、拙稿、「通信販売の現状と課題」『中央大学大学院論究(経済学・商学研究科篇)』第31号、1998年(掲載予定)。
(3)醍醐元正、「インターネットによる通信販売の現状と課題」、『富大経済論集』、第41巻第3号、1996年、231-236ページ。
(4)ニューメディア開発協会、『平成10年度電子ネットワーク実態調査』、1997年、http://www.nmda.or.jp/nmda/net98/press98.html。
(5)東京都生活文化局消費生活部指導課、『マルチメディア等を利用した通信販売に関する実態調査報告書』、1997年、1-4ページ。
(6)醍醐元正、前掲書、1996年、231-236ページ。
(7)1989年当時の東京都の調査に基づく内部資料に基づく。
(8)日本通信販売協会、『インターネット通販利用者調査報告書』、1998年、3ページ。
(9)野村総合研究所、『情報通信利用者動向の調査 第3回調査結果の概要』、1998年、3-5ページ。
(10)日経BP社、『日経マーケットアクセスNews
Release(1998年10月15日)』、1998年、http://www3.nikkeibp.co.jp/MA/guests/release/981015inet.htm。
(11)日経マルチメディア、「第6回 インターネット・アクティブ・ユーザー調査全結果」、『日経マルチメディア』、第37号、1998年、120ページ。
(12)日経マルチメディア、前掲書、1998年、123ページ。
(13)日本通信販売協会、前掲書、1998年、2ページ。
(14)財団法人ニューメディア開発協会、前掲書、1998年。
(15)日経マルチメディア、前掲書、1998年、108ページ。
(16)日経マルチメディア、前掲書、1998年、124ページ。
(17)日本通信販売協会、前掲書、1998年、16ページ。
(18)小寺伸一、「消費者向け電子商取引の現状と発展に向けた課題」、『IDR研究資料』、第134号、1998年、27-28ページ。
(19)日経マルチメディア、前掲書、1998年、124ページ。
(20)流通問題研究協会、『消費者向け電子商取引の発展条件に関する調査研究』、1997年、35,54ページ。
(21)日本通信販売協会、前掲書、1998年、1-2ページ。
(22)日本通信販売協会、前掲書、1998年、15ページ。
(23)日経マルチメディア、前掲書、1998年、124ページ。
(24)サイバー社会基盤研究推進センター、『日本のサイバービジネス統計』、1998年(http://www.ccci.or.jp/cbcb/cb_stat.html)。
(25)詳細は、ECクレジット取引調査研究委員会、『平成8年度ネットワーク等の発展に
伴う今後のクレジット取引の在り方の調査研究報告』、通商産業省ホームページ(http://www.miti.go.jp/report-j/g375083j.html)を参照されたい。。
(26)インターネット等双方向メディアを利用した小売システムと既存小売業態を比較した研究としては、Joseph
Alba,John Lynch,Barton Weitz,Chris Janiszewski,Richard
Lutz,Alan Sawyer,& Stacy Wood,Interactive
Home Shopping:Consumer Retailer,and Manufacturer
Incentives to Participate in Electronic Marketplace,Journal
of Marketing,Vol.61(July 1997),pp.38-53が極めて有用である。
(27)臼杵ひろみ、西尾チヅル、「オンラインショッピングの購買要因」、『マーケティングジャーナル』、第17巻第3号、1998年、25-26ページ。。
(28)E-MAILの情報提供で有効なのはあくまでも見込み顧客がその情報発信企業に信頼し、情報提供を求める場合であり、ジャンクメールと呼ばれる見込み顧客に闇雲の送付されるE-MAILはかえって企業に対してマイナスイメージを与える可能性がある。メディアの特性に関して詳細は、ルディー和子、『ダイレクト・マーケティングの実際(新版)』、日本経済新聞社、1998年、41-50ページを参照されたい。