Back | Next |
---|
一枚の風景写真 ![]() 今中雄(ゆう) 1枚のパノラマ写真、そこに映る風景は空、雲、鳥、畑。畑はとうもろこし畑であるのだろうか、夏の空の下、陽の光を浴びて大地一面に背を伸ばしている。その上を弧を描くように飛び回る四羽の鳥。畑と空のコントラストの世界が長方形に広がっている。 高鹿豊支(とよふみ) 今、私の目の前に一枚のモノクロの写真がある。その写真の端には、英語でタイトルらしきものと、写真を撮った場所と日付が書かれている。どうやらこの写真は、1979年8月、今からちょうど20年前のイタリア南部で撮られたものらしい。 写真には大きな夏の青空が残されている。その空の両端に白い雲のかたまりが一つずつ、左から右へ流れている。そこを4羽のツバメだろうか。いやツバメよりもふたまわりほど大きな鳥が、静かに空を舞っている。3羽は目の前を、残り1羽は遠くからこちらに向かってくるように羽ばたいている。その下では、8月の太陽を浴びて、高く青々と、しかし、わずかに秋の近づきを思わせる色をもった葦たちが風にふかれてゆれていた。 馬谷麻美 そこは見渡すばかりのトウモロコシ畑。その先端には輝くばかりの色の花が咲き乱れ、邪魔されるもののない風に流されるまま、気持ちよさそうになびいている。きっと上から見ると辺り一面きれいな色で埋まっていることだろう。 空は夏色。ところどころ厚い雲がその空を覆っている。ある夏の気持ちよさそうなその空を占領しているのは4羽の鳥だけ。彼らはそれを4等分し、自分たちのテリトリーを守るかのごとく、一定の距離を保ち、円を描いている。今湖の見渡すばかりの風景は彼らのものなのだ。 今村友紀 畑があるようだ。畑の外から空を眺めるように撮られている。何の種類か分からないが、丈のそろった草が一面に生えている。雲がうっすら出ている空を四羽の鳥が思い思いの方向へ飛んでいる。 その鳥たちはパノラマ写真ふうの横長の枠に、ちょうど等間かくで並んでいる。またそれぞれの鳥とカメラの一が近いものもあり、遠いものもあって、この写真の奥行きを感じることができる。そして、この写真の9割がたを空が占めることによって、スケールの大きさを知ることができる。 内藤多栄 ああ、なんて気分の良い1日なんだろう。昼間、地の料理をたらふく食べ、その店のおっさんに聞いてやってきた野原。 思わず寝そべってみる。草の緑、空の青、太陽光の強さがすべてほどよく私の目に入ってくる。地中海の荒削りな青が夕ぐれになり、いよいよその青の終焉を迎えようと、赤ともオレンジともいえぬ色になろうとしている。はじめての色相なのに不思議と安心感がある。世界共通の色彩言語とでもいうのだろうか。 始めはどうなることか少々不安な旅でもあった。しかし今は、こんなに景色を受け入れている自分がいる。鳥が飛んでゆく、東から西へ。私もそろそろ日本へ帰ろうか。
|
Return to Top |
---|