Some E-mails

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●最近来たメールから
        文化産業って何なの、粟谷君?
  • 粟谷佳司君は以前に追手門学院大学の大学院にいたことがある。しかし、今は同志社大学の博士後期過程に在籍している。専攻は社会学で目下勉強しているのは、はやりの「カルチュラル・スタディーズ」だ。かなりがんばっているとは思うが、若手の研究者として将来有望かどうかは、まだぼくにもわからない。「タマゴッチ」で言えば、やっと卵からひなにかえったといったところだろうか。間食や道草に気をつけて、せいぜい力をつけてほしいと思う。もっとも、どんな姿になるかは「タマゴッチ」と違って、本人次第である。失敗したからといってリセットできるわけでもない。
  • ぼくは以前に、「パソコンぐらいうまく使えるようにならなければダメだ」と言って彼にマックを勧めた。だから修士論文や何本かの論文はマックで書き上げられた。しかし、文章書くだけならマックなんていらない。もっとクリエイティブな道具として使わなければ、持っている意味などはない。で、ホームページについても、早く作れと催促してきた。その彼から「ホームページ作りました」という内容のメールが来た。やっとその気になったか。どんなものかさっそく見てみた。
  • タイトルは「文化産業」。やけに大げさだが、背景のない灰色の画面に黒い字の羅列という姿を見てうんざりした。内容も、自分の宣伝ばかり。一体こんなページ誰が読む気になるだろうか?で、さっそく、「こんなしょうもないページ作るな!!」と返事を書いた。そうしたら、画像をいれたくともスキャナはないし、HTMLだって覚えたのではなくて、変換ソフトを使っている段階だと弁解してきた。もっとも、同じような感想は友人などからも言われたらしい。「先生、教えてください」と、また苦しいときの〜頼みだ。仕方がないから、一日だけ面倒見てやることにした。
  • 当たり前だが、ホームページはモニターで見る。だから、字ばっかりの単調な画面では読む気が起こらない。背景の色や、できれば、壁紙などをつけた方がいい。壁紙はどうしたら作れるか、あるいは手に入るか、背景や壁紙の色と文字の色との関係はどうしたらいいか。そんな話と、画像の取り込み、ページのレイアウトのこつなどで、一日奉仕してしまった。授業料をもらって当然だが、なぜか昼飯もぼくがおごった。文化産業というタイトルであるからにはT.W.アドルノの写真をどうしても使いたいというから、研究室にあるアドルノの本をめくって写真を探した。ただの写真ではつまらないから、名前も入れたいと言う。もちろんやるのはぼくだ。で、Fetch を使ってさっそくプロバイダのサーバーにアップ・ロードした。見違えるほどの画面になって本人もしごく満足したようだった。
  • 何日かたってメールではなく、電話が彼から来た。ぼくはなるべくメールにしろといつも言っている。電話だとどうしても長話になってしまう。「すみません。でも、電話じゃないとうまく説明できない話なので………」内容はプロバイダを安いところに乗り換えたというものだった。しかし、安い分だけ、何でも自分でやらなければならない。そしてカウンターがうまく設置できないのだと言う。そんなことぼくにだってわからない。といった話をしているうちに、じゃー別のプロバイダにまた乗り換えます、ということになった。
  • 彼もかなり苦労しているようだ。ところが、その割には見てくれる人の数は少ないし、メールをくれる人など誰もいない。だから少し、めげはじめている。ぼくは、「文章の練習のために、レビューをどんどん書いて載せろ」とアドバイスした。ぼくだって、ホームページのレビューで、ずいぶんいい練習をしていると感じている。おもしろいものを書き続ければ、そのうちポチポチと反応が返ってくる。あまり大きな期待をかけないこと、結果を性急に求めないこと。そんな話をして電話を切った。これから彼のページがどんなものになるのかわからないが、教師としては、ぜひ一度訪ねてやってほしいとことあるごとに宣伝してやろうと思う。