Back | Next |
---|
・イギリスに来て1週間ほどすぎた。地下鉄爆破事件などがあって心配したが、今のところ快適に過ごしている。確かに、地下鉄に乗ると、改札口や車両に警察官の姿が目立つ。目つきも鋭いから緊張するが、予測していたほどではない。もっともロンドンの地下鉄は駅によってはものすごく深いところにあるし、トンネルが小さく、電車も狭いから、かなりの圧迫感がある。何か起きたら一瞬でとんでもないパニック状態になることは、容易に想像がつく。事件が起きたときのキングスクロス駅は大変だったと思う。もっとも地下鉄は時折地上にも顔を出す。これは最初に作ったときが蒸気機関車で、煙を地上に出す場所が必要だったせいだ。何しろロンドンの地下鉄は日本が江戸時代だったときに作られたのである。 ・二階バスはそれに比べたらずっと開放的だが、何しろ渋滞がすごくて、都心部ではいつになったら着くのやらという感じだし、ルートがなかなかわからない。なぜ二階なのかというのは知らないが、なかなか眺めはいい。特に最前列の眺めはパノラマで、運転手がかなり強引な運転をするからひやりとすることが多い。渋滞だからよけいに狭いところに強引に進入するし、自転車も多い。都心部に車を乗り入れると税金を取られるようだが、爆破事件以後に車を使う人が増えたのだろうか。 ・気にしていたことはもう二つ。誰に聞いても食事がまずいと言っていたから、期待はしなかったが、とんでもなくまずいものを食べるのは避けたいと思ってきた。で、今のところ、特にまずいものにあたってはいない。というより、おいしいものの方が多い。イタリアンははずれがないし、コンビニで買うサンドウィッチも、日本で買うのよりましだと思う。一つ気がついたのは、何でも薄味なことだ。ただそれは、好みで塩や胡椒やビネガーを足せばいい。ただ問題は物価高だ。1ポンドは200円ちょっとだが、値段を見る限りは100円で計算した方がいいほどで、カフェで珈琲とサンドウィッチを注文しても10£(2000円+α)もする。いったいイギリス人の平均収入はどのくらいなのだろうか。 ・イギリスの食事がまずいという評判は、もちろん最近のものではない。ジョージ・オーウェルがそれに反論して、イギリスを代表する料理として「プディング」と「パイ」の種類の多さをあげている。確かにそうで、いろいろなものがある。豚の血を固めた「ブラック・プディング」は見た目はともかく、なかなかの美味だった。「プディング」と「パイ」の違いは前者が蒸したもの、後者が焼いたものだと思っていたが、必ずしもそうでもないようだ。オーウェルが美味の代表としてあげていた「ヨークシャー・プディング」はまだを食べていないが、どう見てもパイだ。食べたのは、パイ皮に野菜や肉や魚、そしてチーズを入れて焼いたコニー・ペイスティ。イギリスの南西部のポピュラーな食べ物で油っぽいけど、暖かいうちはおいしい。 ・気になっていたもう一つの点は、タバコだった。飛行機では吸えないし、成田空港でも吸える場所が少ないことはわかっていた。だから、飛行中の12時間+αは我慢をしなければならないと覚悟しいていたのだが、問題はイギリスに着いてからどの程度吸えるのか、ということだった。で、結果はというと意外なほどである。街中での歩行喫煙が多いし、吸い殻のポイ捨ても当たり前である。アメリカとはずいぶん違うし、最近の日本とも違う。ただ、一歩屋内にはいると、どこでも全面禁煙に近い。だから、吸うのはもっぱら外でだが、今のところイギリスに着いてから2箱目で、1日5〜6本しか吸わない。吸えなければそれで仕方がないという感じだから、これを機会にタバコをやめるのは難しくないと思う。 ・イギリス人は歩きながらや電車の中での摂食行動を平気でやると言われている。確かに目につくし、ロンドンでは電車やバス、あるいは歩行中の携帯も気になった。手の爪にマニキュアを塗って、周囲にシンナーの臭いをかがしている女性もいたから、公共の場での対人儀礼にはアメリカ人ほど気を使わないのかもしれない。もっとも、ロンドンですれ違う人たちの人種の多様さはアメリカ以上で、価値観や習慣の違いにどう折り合いをつけているのか興味を持った。 ・最後に建物と街の雰囲気について。とにかく建物のほとんどが石と煉瓦でできていて、その赤や黄色の色合いが美しいし、また趣がある。コンクリート・ジャングルとはだいぶ違う雰囲気を作っていて、街の印象としては東京とはだいぶ違うと思った。どこに行っても大学のキャンパスのよう、と言ったらわかりやすいだろうか。新しい建物ももちろんあるが、多くは数百年前に建てられている。汚れが目につくが、それほど汚い感じはしないし、色を塗ってまた感じを変えていたりする。すぐに壊して作り直しという日本人の発想とはだいぶ違うことが一目でわかる。そういえば、いろいろなものを修理する店も多い。 ・もっとも、建物の屋根にはたくさんの煙突が並んでいて、かつてはそのすべてから、もくもくと煙がでていたことも想像できる。ロンドンがスモッグの街と呼ばれた名残だし、森林のほとんどを伐採してしまった原因の一つでもある。イギリスの気候は日本に比べると、夏涼しく、冬は暖かい。それでも冬の暖房が欠かせなかったのは、石や煉瓦の建物のせいなのかもしれない。また、住宅は長屋が基本で、それぞれがあまり大きくない。これも、石の家だからこそ、容易に建て増しなどはできないということなのか。 ・などと、いろいろ気づいたこと理由を考えながら、のんびり旅をしている。ネットにつなげる機会があれば、また近いうちにアップするつもりだ。次回は「アイルランドだより」になるかもしれない。 |