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![]() ・外から入ってくるものに厳しいのはニュージーランドの自然環境を考えてのことで、意識の高い国であることの証明だが、そうなったことにはそれなりの原因がある。ニュージーランドは800年ほど前にマオリ族が住みはじめ、200年ほど前にイギリス人がやってきた。それで、動物や植物の生態が一変してしまったという歴史がある。 ・トレッキング(トランピング)の度にガイドから聞いたのは、持ちこまれたポッサム、ウサギ、イタチ、鹿などのために在来種の飛ばない鳥たちが激減して絶滅しかかっていること、かつては島の4分の3を占めていた南極ブナなどの在来植物による原生林が、今では4分の1に減ってしまっていることなどだった。ニュージーランドには四つ足の哺乳動物も蛇もいなかったから、鳥は飛ぶことをやめたのだし、広葉樹も常緑だったから、秋の紅葉もなかったのである。 ![]() ・そもそも、いろいろな動植物を持ちこんだのは、人間の目先の損得や必要性だったが、それが害になると、今度はその駆逐や改善に懸命になる。ごく当たり前のようにも思えるが、身勝手さという点では似たようなものだという感想を持った。環境保全に世界でもっとも敏感な国ということだが、それはちょっと違うのではと感じた。 ・今回の旅では、ミルフォード・トラックとルートバーン・トラックを1日ずつ、そしてMt.クック周辺を2日歩いた。ミルフォードとルートバーンは雨が多いために、樹木にはびっしり苔や地衣類が生えている。地面も一面のシダだったりして、日本ではあまり見かけない森の様子だった。原生林をできるだけそのままに残す意味や意義は十分にわかる光景だった。2000m程の山なのに氷河がある。そんな様子もまた珍しく感じた。国立公園として厳しく保全されているところは、たしかに、歩いて楽しく、気持ちのいいところだった。 ![]() ・実は、これからMt.クックの西側にあるフランツ・ジョセフ氷河近くの知人宅にお邪魔するのだが、山越えはできないから、いったん東海岸のクライスト・チャーチまでバスで行って、そこから飛行機で西海岸のホキティカに飛んで、車で迎えに来てもらうことになっている。ヘリをチャーターすれば10分ほどだと言うが、お金のことを考えたら、そんな贅沢はできない。100年前に4000Mの山の頂上までトンネルを掘ってケーブルカーでユングフラウの頂上まで行けるようにしたり、山脈を貫通する道路や鉄路をいくつも作ったスイスとは、ずいぶん違う国だと思った。果たしてどちらの方がいいのだろうか。それは簡単には評価しにくい難しい問題である。 |
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