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![]() ・友部正人はずっと歌い続けていて、アルバムもコンスタントに出している。しかし、初期の「大阪にやってきた」や「にんじん」にくらべると、いまひとつぴんとこない気がしていた。 ・『にんじん』を聴きなおしてみると、このアルバムのすごさがあらためて実感される。浅間山荘事件と新宿の雑踏を重ね合わせて歌った「乾杯」、JR中央線の阿佐ヶ谷駅から見えた夕日を描いた「一本道」、富山県高岡での暴走族の様子を語る「トーキング自動車レースブルース」等々。いい感覚をしている。歌の一つ一つが一枚の傑作画のようだ。同じ印象はもちろんデビュー作の『大阪へやってきた』にも感じた。 ・1991年に出た『 ライオンのいる場所 』にも湾岸戦争をテーマにした「モンタハ」といった曲がある。その時々に出会った出来事や、した経験を歌にしたものを「トロピカル・ソング」というが、彼の歌作りにはそんな姿勢が一貫しているようだ。しかし、いまひとつぴんとこない。 ・たぶん、これは友部がつくる歌以上に、それを聴く僕の姿勢のせいなのだと思う。『にんじん』や『大阪へやってきた』を聴きながら僕の頭に浮かんでくるのは、それをよく聴いていた頃の僕自身であるからだ。そうすると、改めていいと思っているのは、それが僕にとっての懐メロであるからなのかもしれない。 ![]() ・たとえば、早川義夫の「風月堂」は『言う者は知らず、知る者は言わず』ではじめて聴いたが、そこで歌われている登場人物が、まるで自分であるかのように思ってしまった。ただし、その場所は新宿風月堂ではなく、京都ほんやら洞で、70年代の前半である。 黒い上着と 長い髪・もちろん、友部も、南も、そしてディランIIの大塚まさじもずっと歌い続けていて、新しいアルバムも出している。高田渡の映画もできているようだ。それぞれが、どんなふうに年月を重ねてきたのか、今度は新しいアルバムをじっくり聴いてみようと思う。 |
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