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![]() ボブ・ディランを好きになって、彼がガスリーズ・チルドレンと呼ばれるフォーク・シンガーの一人であることを知った。ウッディ・ガスリー、彼はちょうどそのトム・ジョードと同じ時代に生きて、農園労働者の集会などに現れてはメッセージ性の強いフォークソングを歌うシンガーだった。 スプリングスティーンは"Born in the USA"の大ヒット以来、この10年ほど、ろくなアルバムを作ってこなかった。ニュージャージーの白人労働者の家庭に育った彼は、夢と現実との間にある大きな裂け目をテーマにした歌を歌った。ベトナム戦争、失業、町の荒廃と若者たちのすさんだ心。しかし、皮肉なことに、そんな歌を歌う彼には名声と富が転がり込んだ。そして、同時に歌うテーマをなくしてしまった。 "the ghost of tom joad"はハイウエイを背景にして、そこを行き交う人びとを歌っている。失業、犯罪、ホームレス、飢える子供、不法移民........。彼がこのアルバムにこめるのは、現在のアメリカの陰になった日常であり、同時に、ガスリーに始まるアメリカの歌の原点である。 ![]() スプリングスティーンとU2はたぶん、この10年、同じ壁にぶつかったのだと思う。自己の変化と歌ってきたことの間に生まれたズレ、ファンの期待と自分たちの気持ちの間に生じた違和感。それが一方では、原点帰りという形に、他方では徹底的に時流に乗るという戦略になった。そしてどちらも、アルバムとしてはいいできに仕上がっている。彼らにとってロックは自己表現のメディアだが、同時にそれはビジネスである。今の気持ち、考え、感覚を表現することは大事だが、それは何よりよく売れる商品として作り上げられなければならない。この二律背反の要請とどう折り合いをつけるか。僕はこの二枚のアルバムと、彼らが取る姿勢、作品やパフォーマンスとそれに対して持つ距離感などに興味を覚えた。 |
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