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![]() ・今では楽しみのために歌うことができる、と言うとおり、このアルバムには何の気負いも、気取りもない。歌いたいときに歌い、つくりたいときに歌をつくって、出したいときにアルバムを出す。頭はだいぶ薄くなって、からだは重たくなったが、ヤングの声は名前の通り、昔のままでみずみずしい。ヤングというよりはボーイ・ソプラノ。しかし、その声からは、ナーバスな感じが消えて、落ち着きやゆとりが生まれている。クレイジー・ホースとやるロックこそニール・ヤングだと思う人には物足りないかもしれない。でも、ぼくは彼のアコースティックな歌が好きだ。特に今はそう思う。 ![]() ・「スロー・ハンド」と呼ばれるクラプトンのギターはロックを象徴するようなサウンドを聴かせてきたが、キングは彼の少年時代からのヒーローだった。だから、30年以上前の写真に写っているクラプトンの表情は真剣そのものだ。クラプトンはいつかキングと一緒にアルバムをつくろうとずっと夢見てきた。彼の笑顔はその夢が叶った喜びの表情なのかもしれない。 ・もちろん、B.B.キングを敬愛するロック・ミュージシャンは多い。ぼくが10年ほど前に出かけたU2のコンサートは、キングとのジョイントだった。ステージではボノがいかにも楽しそうにキングとデュエットをしていて、ぼくはそのシーンを今でもよく覚えている。 ・20世紀の後半は「ロック音楽の時代」といってもいいと思うが、そのきっかけを作ったのはB.B.キングとマディー・ウォーターズ。この二人がいなければ自分もいなかった。成功したロックミュージシャンには、そんな気持ちが共有されている。半世紀を経て、ロックも歴史になった。この先の行方を見定めるためにも、過去を振り返って見る必要がある。クラプトンのアルバムには、そんなメッセージが読める気がした。もちろん、二人の歌はノリが良くて楽しい。ロックの原点と、そして今。 ![]() ・もっとも、歌の内容は恋人たちの出会いと別れ、夢と悪夢、共感と欺瞞といったもので、彼のつぶやくことばはいつもながら、シニカルで、しかも優しい。 彼女が愛って何と呼んだらいいって聞いた・この歌を聴きながら、ぼくはG.ジンメルの「誠実(トロイエ)」ということばを思い出した。 心には、それを一般にある道へと導いた衝撃がすぎ去った後にも、なおひとたびとられた道を固執する持続力があり、誠実をこのような心の持続と呼ぶことができる。(『社会学の根本問題』岩波文庫)・愛が一時の衝動であることはよく言われている。だから恋愛と結婚は別といった割り切り方がされたりする。しかし、愛とは、そのような衝動が消えた後に残る一人の相手、一つの対象、一本の道にこだわる気持ち。心の持続。3人のロック・ミュージシャンから伝わってくるのは、何よりロックに対するこの気持ち、「誠実(トロイエ)」である。ぼくも全く共感!! |
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