CD Review

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●最近出かけたライブ、買ったCD

ここ数年、女性のシンガー・ソング・ライターが続出している。そのきっかけはシェリル・クロウであり、流れを確かなものにしたのはアラニス・モリセットだった。二人ともデビューの時にはグラミーの新人賞を取っている。すでに大物として扱われてはいるが、似たようなシンガーが多いから、けっしてのんびりしてはいられない。そんな二人が相次いで新しいアルバムを出した。で、両方ともなかなかいい。
アラニスの歌う世界は今度も、きわめて私小説的だ。けれども、前のアルバムとはちがって、自分のことよりまわりに目が向いている。父親、母親、恋人、友達、先生......。仲違い、羨望、嫉妬、離婚、暴力、アル中、薬中.......。そこに少しでも明かりを見つけだそうとする優しい眼差し。ビデオ・クリップは地下鉄の入口などに全裸で立ちつくすといった刺激的なものだが、歌の中身はセックスについても少なくて、穏やかである。
私たちがレストランを出るとき、ウェイターが言った。
「グッバイ・サー、ありがとうございました。あなた達のような立派な方々に食事にきていただいて光栄です。お金も使っていただきました。本当にありがとう。」
私はお下げ髪で、「この店買ってしまいたい」なんて言える気がしてた。
もっとお互いにがんばろうと思っていたのに
もっと大笑いしたかったのに
気づいたときには、もう後戻りができなかった。
            "I was hoping"
  • アラニスの声はしっとりしている。冷たさと暖かさが同居している感じで、いかにもカナダ人らしい気がする。それに比べてシェリル・クロウはカリフォルニアそのものかわいていて力強い。アラニスが多感でお茶目なら、シェリルは男勝りのじゃじゃ馬。実は、ぼくはどちらのタイプも好きだ。
    私たちがクレイジーだと思うの?
    座りこんでシットコムばかり読んでる、脳なしの怠け者
    状況が悪いのはわかっていても
    実際どうなってるのかはわからない
    ただブームが去るのをじっと見ているだけ
    朝食の卵が壁にぶつけられる
    で、誰もが言う。変化は空中にぶら下がってるのにって。                 "Subway"
  • シェリルの世界はアラニスよりもずっとわかりやすい。失恋するけど、くよくよしない。あんな男見返してやると鼻っ柱が強い。その分、アラニスのように素顔がかいま見えそうな気はしない。同様の違いは、二人の、人びとについての風景描写にも現れている。だから文学的な評価で言ったら文句なしにアラニスの方が勝っている。でも彼女たちはミュージシャンだから、やっぱりサウンドで判断しなければならない。で、そうなると、シェリルの歌もサウンドにマッチしてる気がして、ぼくにはどちらの雰囲気も好きで甲乙つけがたいということになってしまう。



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