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![]() ・この作品はたんなるライブのドキュメントではない。ライブの間に自分の生い立ちから現在までの歴史をたどり、その時々の自分を思い返している。ただし主人公はピンク・フロイドという名のミュージシャンである。ロジャーズは父が第二次大戦で死んだことで、父親不在で大人になった。しかし彼の祖父もまた第一次大戦で戦死していたから、父親自身も父親なしで育った。「ウォール(壁)」には、そんな自身の歴史に追い被さった戦争や、現在の世界における紛争や張り巡らされた壁に対する批判が、強く主張されている。ステージの仕掛けの大がかりさとも相まって、圧倒されながら見た。 ![]() ・彼は日本のことは知らないだろう。しかし、薄汚い嘘にまみれた政治や、しょうもないスキャンダルにうつつを抜かすメディアに対して、同じように糾弾したくなった。ジャケットは検閲が入って黒く塗りつぶされているが、財務省が最初に出してきた文書そのままだ。「働かせ改悪」や「カジノ法案」が、本当に私達が欲したものなのか。残念ながら、今の日本には、こんなストレートに批判するミュージシャンはいない。 ![]() ・レゲエはダンス・ミュージックという色彩が強いが、一方でボブ・マーリーがそうであったように、政治や社会に対する反抗や批判といった姿勢も貫かれている。このアルバムにも、子どもの頃憧れたアメリカとはずい分違ってしまった現状を批判する歌がある。あるいは貧困と犯罪、夜勤仕事などが物語として歌われている。しかし、また同時に、自由の女神の国、新しい文化が生まれ続けてきた国であることも歌っている。 ・アメリカが希望と悪夢を合わせ持った両義的な国であることは、ロックが生まれた60年代からずっと変わらない特徴だった。しかし今は、夢ではなく悪夢をもたらす国のように思えてならない。米朝会談で日本が巻き込まれる戦争は回避されたが、トランプの気まぐれで、どうなるかわからない。レゲエを聴くと、ほんの少しだけほっとする。 |
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