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6月17日 芝山幹郎『アメリカ野球主義』(晶文社)
![]() ・何でこんなにおもしろいんだろう、と考えたら理由が二つ浮かんできた。一つは、メジャー・リーグにある逸話やユニークな選手の豊富さ。これは例えば、レイモンド・マンゴーの『大リーグなしでは生きられない』(晶文社)を読んだときにも感じたことだった。生で見たことなど一度もないメジャーの選手やゲームの話になぜかわくわくする気持ちを持ったが、それは日本の野球やその描写には一度も感じたことがないものだった。 ![]() ・この本を読まなくとも、メジャー・リーガーが個性的であることはテレビでゲームを見ていればすぐわかる。しかし、もっと大きいのは情報量の少なさではないか、という感じがした。日本のプロ野球選手は巨人と阪神ばかりが注目されて、後はほとんど話題にもされない。しかも、甘やかしや揚げ足取りをしながら、もう一方で精神論や道徳論が幅をきかしすぎる。だから、ぜーんぜんおもしろくない。と僕は思う。うんざりして聞く耳すら持つ気がない。同じ調子で野茂や伊良部を追いかけるから、彼らにいつでもうんざりした顔をされてしまう。そうされながら、記者たちは自分たちのおかしさに気づかない。日本のプロ野球や選手をつまらないものにしているのは、誰よりマスコミなのである。 ・この本のもう一つのおもしろさは、文章というかレトリックのうまさにある。芝山幹郎という人は読ませるコツを憎らしいほど心得ている。日本人のくせになぜこんなにメジャー・リーグのことに詳しいんだろう。そんなことを思いながらも、それがけっして知識のひけらかしにはなっていない。僕にもこんな文章が書けたらいいのに、読みながらちょっと嫉妬してしまった。 |
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