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●最近読んだ本 |
7月27日 |
「ソーシャル・ビジネス」と「21世紀の歴史」 |
![]() ・壮大な物語だが、独特の切り口と口調で興味深く読んだ。書かれたのが2006年で翻訳されたのは08年の8月だから、サブプライムショックで一気に世界的な大不況が襲った直前だが、まるでそれを予告するような指摘もあって、フランスではずいぶん話題を呼んだらしい。しかし、この本のテーマはそこではなく、不況や社会的な格差、環境破壊を乗り越えて、人類がどうしたら、21世紀を生き抜くことができるかというプランを提案した点である。 ・アタリの予測では、21世紀の前半はますます悲惨なものになる。市場の力が国家を超え、国単位では制御できなくなる。近視眼的な見方しかできない市場では、資源や食料、あるいは水や空気を巡る統制のきかない奪い合いが起こり、紛争や破綻の火種が世界中に発生する。で、そのままでは当然、世界は破滅ということになるのだが、そこまで行ってやっと、何とかしようという大きな動きが起こるという筋書きになっている。 ![]() ・「ソーシャル・ビジネス」はNPOとは違って、企業として利益を上げることを目的にする。その利益は企業や市場の拡大に向けて投資して、貧困や教育、あるいは衛生面の改善を進めることになる。それはもちろん、毎日の食べ物に飢え、路上で物乞いをする人たちを目の当たりにしたところから出発した活動だが、ビジネスとして成功することで、先進国の人たちに新しい発想を気づかせたり、大きな企業との合弁で起業するといった動きも作りだしている。「エヴィアン」で有名なフランスの「ダノン社」と「グラマン銀行」が合弁して作った「グラマン・ダノン社」は、子どもたちの栄養状態の改善を目指してヨーグルトをバングラデシュで生産して安価で売り、採算のとれるビジネスに成功させている。仕事を増やし、子どもたちの栄養状態を改善し、学校へも通える環境を増やし続けているというのである。 ![]() ・テーマからはずれるが、読みながら気になったことがある。「ソーシャル」が「ビジネス」や「起業」「企業」の頭につくと、なぜ「社会貢献」といった意味になるのかという点だ。そう考えたら、「ソーシャル・キャピタル」が「社会関係資本」と訳されていることを思いだした。で、日本語の「社会」には「貢献」や「関係」という意味が含まれていないことに気づいたのだ。日本語で「社会」に対応し、「貢献」や「関係」を含むのは「世間」である。しかし、「世間」にあるのは、タテ関係に基づく「甘え」の意識であって、「個人主義」に基づく「自立の意識」と、それをささえる「互助の精神」ではない。日本人には馴染みにくい発想だろうなと、つくづく感じた。「貢献」や「関係」をわざわざ補わなければならないほど、日本人は「社会」に無頓着なのだから。 |
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