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斜陽の国と認めなければ

・大戦の敗戦国だった日本は、奇跡的といわれるほどの経済成長を果たしてアメリカに次ぐ経済大国になった。その成長を支えたのは第一に家電メーカーであり、自動車産業だった。経済成長が鈍り始めてすでに20年を超えているが、ここに来て、家電や自動車企業の中に,存続が危ぶまれるものが続出している。シャープは台湾の企業に買収され,東芝も家電部門を中国の企業に売却した。ソニーにはかつての面影はなく、パナソニックも再建に懸命だ。そしてまだ元気だといわれている自動車にも斜陽の波が及びはじめている。エアーバッグのタカタに続いて,今度は三菱自動車である。

・どう考えたって,その家電が勢いを盛り返す可能性はないし、自動車だって,電気が主流になれば、現状を維持することも難しいだろう。そして何か新しい産業が起こる気配もない。大企業が抱え込んだ内部留保はこの10年に100兆円増えて300兆円を越えたと言われている。逆に正規から契約や派遣といった雇用形態の変化も著しい。サラリーマンの平均年収はアベノミクスにもかかわらず減少傾向は止まらない。日本の企業が成長や攻めではなく、守り一辺倒であることは明らかである。

・ところが当の安倍首相は今年の年頭所感で、「一億総活躍社会」というスローガンを掲げ、「GDP600兆円」、「希望出生率1.8」 、「介護離職ゼロ」に向けて三本の矢を放つとぶち上げた。この現状との落差はまさにブラック・ジョークで、GDPをあげる材料がどこにあるのかわからない。「武器輸出三原則」を「防衛装備移転三原則」と改悪して進めたオーストラリアへの潜水艦12隻の輸出が失敗したし、インドネシアへの新幹線の輸出も中国に取られている。原発の輸出などというのは狂気の沙汰だろう。

・出生率を上げるといった先から保育所不足が露呈して、政府は慌てて定員増や給与増で急場しのぎをしはじめた。「保育所落ちた日本死ね」のブログに同感する人たちが大勢いて国会でも取りざたされたが、安倍首相の「匿名だから確認できない」といった発言が、怒りを買って大問題になった。現実を知らない上でのスローガンであることは「介護離職ゼロ」でも変わらない。老人ホーム不足はいよいよ深刻化しているし、保育士同様介護士の給与の低さも相変わらずだ。

・数日前に、育児と介護を同時にしている人が25万人いるといったニュースがあった。以前から問題になっている老老介護も,介護する人が65歳以上である割合が5割を超えたようだ。認知症の人が原因の鉄道事故で、その責任を家族に負わせる 裁判があったり、介護に疲れた殺傷事件も繰り返されている。このような状況は,これからますます深刻化するものであることは明らかで、ノーテンキに「介護離職ゼロ」などと言える状況ではないのである。

・日本は経済も人口も減少期に入っている。すでに世界でも類を見ない超高齢社会なのである。他方で地震は活動期になったと言われている。東日本の大震災から5年で,熊本・大分が大地震に襲われた。この先、もっと大きな地震が続発する危険性を指摘する人も多い。このような状況を前提にしたときに出てくる政策は、成長ではなく衰退や減少、大企業優先ではなく,人びとの暮らしの充実に目を向けたものでなければならないはずである。もちろん、今からでも遅くないから東京オリンピックは返上すべきだと思う。

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2016年05月02日 07:21に投稿されたエントリーのページです。

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